「人手不足」「働き方改革」「ワークライフバランス」が注目を集め、公務の世界でも現場主導の改革が盛んになってきた。現場の職員が自ら無駄な仕事を見直し、手続きを簡素化し、なるべくIT化していく動きである。

 ところが、こうした動きから取り残されがちなのが現場の各施設、特に保育園、介護施設、保健所など専門職員の職場である。これらにおいては昔ながらの仕事や書式が温存され、一方で人手不足が深刻である。今回はある市役所の公立保育所の実態を手掛かりに、こうした現場の改革アプローチを考えたい。

保母さんは23%の時間を事務処理に投入

 今回は市内の約70カ所の保育所に対して「困っていること」「改善したいこと」が何かをヒアリングし、またアンケートを実施した。想像通り、「人手不足」「処遇の不満」などヒト関係のコメントが多く上がってきたが、特徴的だったのが「書式」にまつわる苦情だった。

 保育所は多数の子どもたちの世話を様々な雇用・勤務形態(常勤、非常勤、パートなど)の職員が担っている。その管理に様々な書式を使う。また父母との連絡や集金などの業務も多く、父母に書いてもらう書類も多い。数えてみると職員の出務簿、業務日誌、スタッフシフト表のほか、父母が書く登降園簿、その集計表、出納簿など驚くほど多数の書式とそれらの集計の事務仕事がある。

 これを時間ベースでみると、保母さんは勤務時間の23%を事務処理に割いているとわかった。保母さんの本来業務は子どもたちの世話であり、事務処理は少ないほうがいい。ここが改善できると、もっといい保育ができるし、人手不足問題にも貢献できる。

「書式」が生み出す非効率

 調べていくと「書式」の処理は現場にとって予想以上の負担になっているとわかった。例えば父母が記入する登降園簿では、「文字が判別困難」「24時間制と12時間制の時刻表記が混在」「他の園児の欄に誤記」「欄が小さく書きにくい」「記入漏れ」などの問題が日常的に頻発していた。

 これらは書式を変えれば解決する問題が多い。だが現場からはなかなか言い出せない。各種書類は最終的に「本庁」に提出し、延長保育料や給与の算定の基になる。本庁は書式変更のせいで起きる間違いや混乱を恐れ、なかなか変えたがらない(一方で各園の書式は必ずしも同一ではなく、その集計作業は煩雑を極め、本庁も苦労しているのだが)。保育園でも本庁でも職員は忙しい。結局、今までの書式のまま、何も変わらない日々が過ぎていくのだった。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら