人工知能技術の新潮流「ディープラーニング」が、物体認識を筆頭に音声認識、自然言語解析、医薬品候補の探索などで、他の技術を圧倒する性能を示している。ディープラーニングは、コンピュータ科学の最新の成果であると同時に、コンピュータを劇的に省電力化する新アーキテクチャの実現や、脳が人間に知性をもたらす秘密の解明につながる可能性がある。

 「コンテスト初出場で、米グーグルのチームがここまで他を圧倒するとは…」。ある人工知能の研究者は驚きを隠さなかった。

 2014年8月、コンピュータによる物体認識の精度を競う国際コンテスト「ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)」の最新結果が公開された。

写真1●物体認識のコンテスト「ILSVRC」における課題の例。1枚の写真に何が映っているか、コンピュータに検出させる
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 ILSVRCは、飛行機や人、ピアノなど様々なものが映っている写真データから、コンピュータに「何が映っているか」を検出・識別させる、人工知能のコンテストだ(写真1)。例えば「飛行機」と一口にいっても、尾翼だけの写真、旧式のプロペラ機、機内の写真まである。これを正確に識別させることは、「飛行機」という概念をコンピュータに理解させる試みでもある。 

 ILSVRCに初出場した米グーグルのチーム「GoogLeNet」の人工知能は、他のチームを突き放す性能を見せた。200ある物体のカテゴリーのうち142で最高の検出性能を示したのだ。識別の誤り率はわずか6.7%で、これは前年チャンピオンの約2分の1だ。

 グーグルが構築した人工知能は「ディープラーニング」と呼ばれる、脳神経細胞のネットワークを参考にした機械学習のテクニックに基づくものである。ILSVRC 2014に参加した他のチームも、上位チームは軒並みディープラーニングを使っている。少なくも物体認識の分野では、わずか2年のうちにディープラーニングが他の手法を退け、圧倒的な性能を示すようになった。

 グーグルだけではない。米フェースブック、米マイクロソフト、米IBM、中国百度が、ディープラーニングの研究に多額の資金を振り向け、研究者を高額の給与で雇っている。日本でも、ディープラーニングを事業に応用しようと、いくつかの企業が既に動き出している。ディープラーニングとは、どのような技術なのだろうか。

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