友だちの数が1000万人を突破したという驚異の対話ボットから、弁護士より早く正確に証拠を仕分けるシステムまで、自然言語処理の技術をビジネスに応用する試みが活発になっている。米アップルの「Siri」やNTTドコモの「しゃべってコンシェル」、米IBMの質問応答システム「Watson」などの成功例を受け、改めて自然言語処理のビジネス鉱脈を掘り起こす機運が高まった格好だ。

 自然言語処理の応用先として、企業が掘り当てつつある鉱脈は二つある。一つは「対話」、もう一つは「多読・深読」だ。

対話エージェント、銀行が相次ぎ開発

写真1●三菱東京UFJ銀行がアドバンスト・メディアと組んで開発中の対話エージェント
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 三菱東京UFJ銀行は、第4回で紹介したWatsonの導入検討と並行し、もう一つ開発しているアプリケーションがある。音声認識やチャットを通じ、顧客の質問に応える対話エージェントだ(写真1)。2015年度中の実用化を目指している。

 同銀行は、日本語向け音声認識開発のアドバンスト・メディアと組み、2014年夏ごろからバーチャルエージェントを開発した。顧客対応のため整備したFAQ(よくある問い合わせとその答え)のうち70項目ほどについて、顧客の質問を自然言語処理で分析し、決められた回答をするものだ。

 FAQの内容を、そのままバーチャルエージェントに答えさせる。これが簡単なようで、意外と難しい。「オンラインバンキングを始めたい」という質問一つとっても、顧客の質問は「オンラインで明細確認をしたい」から「ネット口座を作りたいんだけど」まで、多様な言い回しがあり得るからだ。

 そこで三菱東京UFJ銀行では、コールセンターの従業員の協力を得て、あるFAQ項目について、顧客がどんな言い方で質問するかを複数考えてもらい、バーチャルエージェントが理解できなかった言い回しをリスト化しているという。これにより、幅広い言い回しに対して、同じ意味の質問項目を割り出し、回答することができる。

写真2●東邦銀行が提供している対話エージェント「東邦未来」
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 「多様な言い回しに対応するため、大量の質問リストを用意する」というアプローチで共通するのが、福島県を拠点とする地銀、東邦銀行が東芝ソリューションと共同開発した対話エージェント「東邦未来」だ(写真2)。PC、スマートフォン双方に対応した遺産相続専門の相談窓口サービスとして、2014年11月から実運用を始めている。

 先に挙げたオンラインバンキングの例と同様、「相続手続きを知りたい」という質問項目一つをとっても、顧客ごとに多彩な言い回しがあり得る。「相続手続きをゼロから教えて」「相続について何も分からない」「父が亡くなりまして…」といった具合だ。

 東芝ソリューションは、ソーシング事業者を通じて一般消費者を対象にしたアンケートを実施。一つの質問項目について、どのような言い回しをするかを回答してもらい、それをシステムの辞書に反映させた。この辞書に、質問の意図を解析するソフトウエアを組み合わせ、顧客の質問に的確に回答できるようにした。「辞書の構築やメンテナンスは、社員だけで行ったら膨大な手間がかかる。ここはクラウドソーシングが生きる領域だ」(東芝ソリューション)。

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