VRやAR分野で沈黙を貫いていたAppleがAR(Augmented Reality、拡張現実)に参戦した。開発者はAppleがiOS 11で満を持して投入したフレームワーク「ARKit」を利用し、これまでとは比較にならないほど簡単にAR機能をアプリに搭載できる。ARKitでできることを検証すると、ARに対するAppleならではのアプローチが感じ取れる。

 GoogleもARKitとガチンコ勝負の「ARCore」を発表したことで、スマートフォンARの分野がにわかに騒がしくなってきた。本稿は、ARKitやARという技術の可能性について前編と後編に分けて考える。前編では、筆者が一般ユーザーとして個人的に触れてきたARの軌跡をたどった後、ARKitを使った開発者にARへの思いを聞く。

AR機能によりリアル世界の好きな場所にロール式自動演奏ピアノを設置して音楽を楽しめる「Piano 3D」。このアプリについては後編で紹介する
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意義の大きかった「電脳コイル」と「セカイカメラ」

 日本人は、AR(Augmented Reality、拡張現実)の分野に関して早熟だったはずだ。今から10年も前にアニメ「電脳コイル」で基本を予習し、その後にすぐに登場したiPhoneアプリ「セカイカメラ」で実地に体験したからだ。前者はNHKのEテレで放映されたものの視聴率は低迷、後者はフェードアウトするようにサービス終了という、ちょっとばかり残念な結果ではあった。だが多くの人がARを知り、iPhoneという身近なデバイス上で手に触れる形で存在した意義は大きかった。筆者自身も、これらが無ければ、「拡張現実」というキーワードにもっと鈍感だったかもしれない。

 ARアプリ開発者の「AR三兄弟」も時を同じくして登場した。2009年10月、筆者は、「おばかアプリ選手権」というアプリ発表イベントで彼らと同じステージに立ったこともあり、セカイカメラとはまったく異なるアプローチでARに挑戦する彼らの姿に、おもしろいことを考える人たちがいるものだと関心したものだ。その後、彼らは、ARの可能性を広げつつ、企業とコラボするなど様々なメディアで活躍している。

 米国には2013年デビューのGoogleグラスという話題になったARデバイスもあったが、デベロッパー向けに出荷されただけでこちらも終了してしまった。最近、Googleグラスの遺伝子を引き継ぐ「Glass Enterprise Edition」が発表されたが、その名が示す通り、MicrosoftのHoloLens同様、企業向け製品という位置づけのようだ。

 そして2016年、ポケモンGOがやってきた。ARという言葉が一気に大衆化した。ただ、ポケモンGOは、カメラが写す実写風景にキャラクター画像をオーバーレイ表示しており、いわば「擬似AR」のような位置づけである。「なんちゃってARだよ」と揶揄する識者の声も聞こえてきた。とはいえ、キャラクターやポケストップがリアル世界の位置情報とひも付けられ「そこに行かないとゲットできない」仕組みは、一般ユーザーからすると十分にARと見なせる。

 余談だが、クルマのカーナビゲーションに搭載されているリヤビューカメラ(バックモニター)も、ハンドルの切れ角に応じた進路ガイドを実写にオーバーレイ表示させるという意味で、筆者はかねてより初歩的なARだと見ていた。ガイド付きバックモニターは、2000年代初頭に登場した。最近では、フロントウィンドウ上部に設置した透明のヘッドアップディスプレイ(HUD)に道案内情報を表示する機能を持ったモデルも登場した。メーカーでは、「AR HUDビュー」という名称で販売している。

カーナビが進路ガイドを実際の映像にオーバーレイ表示している様子
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