エンジニアを幸せにしたい──。

 ボサノヴァのリズムを想起する軽快な語り口で、エンジニア向けの勉強会カンファレンス「CROSS 2016」(2016年2月5日、11時より横浜大さん橋ホールにて開催)に込めた思いを語る実行委員長の山口亮介氏の話を聞きながら「幸せかぁ...」と空気を振動させない程度の声を発してしまった。「幸せ」という漠然としたキーワードを提示され、記事にまとめるのに苦労するだろうなあ、などと取材モードとは別回路の思考タスクを回していると、突然、米国の心理学者の言説が思索に割り込んできた。

 それは、ポジティブ心理学の第一人者であるソニア・リュボミアスキー教授の「幸福感」と「成功」についての研究成果だ。世界的な研究者に失礼を承知で要約すると概ね次の様な考え方を述べている。

「人は成功したらから幸せになるのではない。幸せな人が成功するのだ」。

 ならば「幸せってなんだろう」「どうすれば幸せを得られるのだろう」という素朴な疑問が大波となって全身に打ち寄せて来る。こういうことだ。教授は、人が幸福感を得るには、日々の生活の中で積極的に行動を起こすかどうかが重要になる、と説く。「行動」というのは何も、ビッグプロジェクトを立ち上げたり、大きなリスクを背負って大仕事に挑戦する、といった大それたことのみを言っているのではない。

 電車の中で席を譲る、1駅手前で降りてウォーキングする、朝早く起きるなど、日々のちょっとした「行動」を積極的に起こしたかどうか、ということが大切なのだそうだ。受け身ではなく、自ら行動を起こすことの積み重ねで人は幸福感を得ることができ、そういう人は仕事、私生活、健康面で高いパフォーマンスを維持していることが調査で確認されているそうだ。近年ビジネス誌などで「社員のハピネスは業績に影響する」といった論調の特集記事が組まれたりしているのも、このあたりの研究が基になっている。

写真1●CROSS 2016実行員会のメンバーに週末の19時、西新宿にあるニフティ本社の会議室で話を聞いた。左から石切山開氏(ヤフー株式会社)、山口亮介氏(コネクテッド・デザイン株式会社)、野口豊氏(コムチュア株式会社)、池田沙香氏(ニフティ株式会社)。写真は筆者撮影
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 そういう意味でいうと、今回話しを聞いた実行委員長の山口氏をはじめとするCROSS 2016の実行委員会のメンバーの人達は、幸福感が高い人達なのだろうなあ、さぞ仕事ができる人達なんだろうなあ、と取材中、思い見ていた。金銭的な報酬はゼロであるにもかかわらず「おもしろいことがしたい」という鋭気を原動力に、手弁当でアフター5のプライベートな時間を費やして勉強会イベントの成功に向けて奔走しているのだから、リュボミアスキー教授の言説に従い「この人達は幸福感に突き動かされている」と思うことでその場は納得したわけだ(写真1)。

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