今やモデリングのスキルは,ITエンジニアにとって必須と言えます。Part1では,業務システム分析におけるモデリングの意義を解説します。

 業務システムは,業務を効率化してコストを削減するために,広く企業に利用されるようになりました。しかし,膨大な情報化投資を行ったにもかかわらず,結果的には業務の効率化に結びつかず,使われない,あるいは使えないままに放置されているシステムがいたるところにあるのが現実です。

 システムを効率よく開発することは重要ですが,間違ったシステムを効率的に開発しても,そのシステムへの投資は無駄になってしまいます。

 無駄な投資を抑えるためには,まず業務を経営の構成要素として適切に設計し,その中でシステムを業務の構成要素として開発しなければなりません。つまり,システム要求は業務から論理的に導かれる必要があるのです。

 そのためには,業務を可視化する必要があります。本来,ユーザー企業の現場は業務改革を自ら推進する力や意欲,いわば業務改革の駆動力を持っています。ですから,業務を可視化する手立てと進め方があれば,現場のコミュニケーションが活性化し,使われる/使えるシステムを開発できるようになります(図1)。業務を可視化する手立てとして,モデリングが有効です。

図1●使われる/使えるシステムにするために
図1●使われる/使えるシステムにするために
ムダな投資を抑えるためには,業務から論理的にシステム要求を導かなければなりません。モデリングで業務システムを可視化して,現場のコミュニケーションを活性化します

 本講座の目的は,業務システム分析のためのモデリングスキルを磨くことです。本講座をお読みいただくことで,論理的に業務を分析してシステム要求を導くための手立てを身に付けることができます。また,ユーザー企業とベンダーがコミュニケーションするための土台を築けるようになります。

 Part1では,業務システム分析におけるモデリングの意義を解説します。また,本講座の概要も説明します。

顧客は業務全体が見えない

 モデリングのスキルは,システム開発ライフサイクル全般の基礎スキルであり,今やITエンジニアにとって必須のスキルです。システム開発ライフサイクル全般をモデルベースで進めるための環境も整備されつつあります。

 では,なぜモデリングのスキルが必須なのでしょうか。その疑問に答えるために, ITエンジニアの役割を考えてみましょう。

 ユーザーの要求を獲得する場面において,よく言われている決まり文句があります。それは「ユーザーは漠然とした要求しか持っていない」ということです。

 システムで行えることが限られていたときには,少しずつシステム化する業務の領域を増やしていったので,ユーザーはシステム化した後の業務がだいたい“見えて”いました。また,システム化することで業務そのものが変わってしまうということも,あまりありませんでした。そのため,ユーザーに聞けばシステム要求を獲得することができました。

 これに対して,システムで行えることが増えてくると,対象とする業務やシステムが多様化して大規模かつ複雑になりました。あるシステムが,他の部門や他の企業で稼働しているシステムと連携することは,今や珍しくありません。システム化することで業務そのものが変わってしまうことも多くなっています。業務そのものが変化するスピードも増大してきました。

 そのため,ユーザーは業務全体を見通せていないのです。これでは,ユーザーの要求が漠然としたものになるのは当然です。

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