世間が2014 FIFAワールドカップで熱狂するなか、STAP細胞を巡る一連の騒動は、いまだにメディアをにぎわせている。このSTAP騒動で一躍注目を集めたのが「ノート」の存在だ。

 記載に不備がある、第三者がチェックしていない---。世界的な発見につながるような実験において、ノートが重要なチェック機構の役割を果たしていることが、この騒動での指摘によって改めてクローズアップされた。

 ここでいうノートとは、「実験ノート」を指す。主に企業のR&D(研究開発)部門や大学・公的機関の研究室が使うもので、一般的なノートに比べて書き方や管理・チェックの手順を厳しく規定している。特許出願や論文執筆、法規制、安全性の確保などに対応する狙いがあるからだ。

 実験ノートのバリエーションに、「電子実験ノート(ELN:Electronic Lab Notebook)」がある。文字通り、実験ノートの電子版だが、紙の実験ノートに比べて数々の利点を備える。電子実験ノートをくだんの研究者が使っていたら、STAP騒動に対する何らかの抑止力となった可能性もある。

 実際、電子実験ノートへの関心は高まりつつあるようだ。「STAP騒動が持ち上がった2014年4月ごろから、問い合わせ件数が一気に増えた」。電子実験ノートの主要ベンダーの1社、アクセルリスの栗原秀行インフォマティクス部マネジャーはこう証言する。

注)米アクセルリスは2014年5月、仏ダッソー・システムズに買収され、ダッソーのBIOVIAブランドの一部となった。6月20日現在、アクセルリス日本法人は継続してビジネスを展開している。

 「以前は週1件程度の問い合わせを、主に製薬会社から受けていた。ところが4月以降は、ほぼ毎日問い合わせを受ける。相手は製薬に限らず、公的研究機関や、化学、衛生雑貨、食品、衣料の企業など大きく広がっている。しかも、真剣な相談が多い」(栗原マネジャー)。

 多くの人にとって、あまり馴染みがない電子実験ノートだが、その中身をひも解いていくと、一般的なノートの思わぬ効能や可能性が見えてくる。普段はなかなか分からない、電子実験ノートの世界をのぞいてみよう。

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