2014年はどんな年になるのか。毎年この時期になると、多くの取引先からこうした問いかけをいただく。しかし今回は、納得いただけるような答えを導き出すのが正直難しい。

 大きなイベントはいくつかある。例えば夏ころには、携帯各社がVoLTE(Voice over LTE)の導入に踏み切る気配だ。詳細は検討中だろうが、音声サービスの「アプリ」化を意味するとしたら、事業者のビジネスモデルはもとより、携帯「電話」という概念が大きく変わることになる。

 また、「iPhone 6」をはじめとしたiOSファミリーの拡大も、恐らく2014年春から秋にかけていくつか登場するだろう。SIMロックフリーiPhoneも投入済みで、もはや「iOS大国」となりつつある日本においては、モバイル業界のエコシステムに少なからずインパクトがあるはずだ。

 パーソナルデータに関する法改正の方針も、2013年末の検討会などで概ねまとまった。今後は6月ころの大綱策定と、2015年の通常国会への法案提出をにらんで、詳細を詰めていく作業が進む。日本では異例といえるほど集中的に議論が進んでいるが、実際の法改正にはこの先まだ時間を要する。移行期にどのような措置が取られるかが焦点となる。

VoLTEはユニバ見直しにも関係

 こう並べてみると、2014年も大きな動きが続くように思える。しかし、それらをよくよく眺めると、一朝一夕に大きな変化が生じているわけではない。将来に向けてジワジワと影響がにじみ出ていくような印象を受ける。

 例えば前述のVoLTE。将来的には、日本社会における音声電話サービスの位置付けや、それに伴うユニバーサルサービスの見直しという議論に結びつくだろう。しかし、LTEの全国規模のインフラ整備には今後も時間を要し、VoLTEはそれと相関するサービスでもある。すぐに従来の電話が置き換わるものではない。

 iOSファミリーも、むしろこのまま日本国内での勢力拡大につながるのか、あるいは全携帯電話事業者の参入で過当競争が進み、徐々に飽きられていくのか、見通しはつかない。パーソナルデータの検討は、まだ先がある話であることは前述の通りだ。

何を捨てなければならないのか

 そのため、冒頭の問いかけに対しては、「2014年は将来に向けた仕込みの年となる可能性が高い」というのが回答になる。質問者の多くは、スッキリしないだろう。回答する筆者も同様なのだから仕方ない。

 ただ通信業界に従事する人にとっては、この時期の動向は、今後の中長期の雌雄を分け、重要な年となることはほぼ間違いない。 直近では、2015~16年にかけて、NTTの事業体の見直しなどの議論が見込まれている。同時期には固定ブロードバンドの市場飽和も視野に入ってくるだろう。またそのころには、法整備を終えたパーソナルデータを含むビッグデータの活用は、いま以上に重要な社会基盤となっているはずだ。

 その先も大きな変化が待っている。人口や世帯数、世帯収入といったマクロトレンドが下向きに入るインパクトが、日を追うごとに社会のあちこちで顕在化することは、もはや「約束された未来」である。その時、情報通信技術がどのような役割を果たせるのか、あるいは経済合理性の観点から、何を捨てていかなければならないのか。そうした議論も、2014年ころから水面下で本格化するはずだ。

 今後訪れる市場の変化は、恐らくこれまでの日本が経験してきたような、単純なものではない。市場の変化をビジネスチャンスとするためにも、目先のイベントに踊らされず、より深く考え、議論を重ねていく必要がある。2014年はそんな契機となる年だろう。

出典:日経コミュニケーション 2014年1月号 p.88
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