例えば、そうした工夫の一つに、「プロジェクトに参加する若手メンバーに、そのプロジェクトで何が学べるのかを伝えることはもちろん、その先についても、『こういうことを学んでいけるようにする』と可能な限り長期的視点に立って話すようにする」というものがある。ある大手SIベンダーのPMから聞いた話である。

 若手が不安に思うことの一つに、「今言われるままにやっているこの仕事が将来的に本当に自分の役に立つのか」ということがある。そうした若手エンジニアに対して、3年後や5年後、10年後といった将来になってもらいたい姿/なるべき姿を「ロードマップ」としてキチンと提示することで、不安を取り除くとともに、より一層の自発的成長を促そうというわけだ。

 「経験の浅い人間を積極的に抜擢して経験を積ませる」という取り組みをしているベンダーもある。現場経験は現場でしか得られない。しかし、コストや期間に余裕がないプロジェクトを立ち上げるときは、どうしてもスキルを持った経験豊富な人のみをアサインしがちになる。それではいつまでたっても若手が育たない。そこで、経験の浅いサブリーダークラスをリーダーやプロマネに抜擢し、周りが手厚くサポートすることで経験を積ませようという取り組みである。

 あるSIベンダーの場合、女性の比率が高く、産休・育休で抜ける可能性を考えると、現実問題として若い女性エンジニアを大きなプロジェクトのPMやリーダーにアサインするのがなかなか難しかったという。しかし、「結局は周囲のサポートやバックアップ次第」と考えを改めて、最近では積極的に抜擢して育成しようという方針に転換したとそのベンダーのベテランPMは話していた。

 とある大手メーカーのSI部門にいるベテランPMは、「大型プロジェクトが完了したあと、技術やノウハウを継承し、次の世代のリーダーになってもらうために、才能のある若手メンバーを最低1人は必ず保守運用部隊に残す」という工夫をしているという。そのメーカーが手がけている金融証券系システムは、5年周期で大規模なシステム更改案件が発生するというが、その5年後を見越して現場に残して育てるという判断である。

 社内資格や表彰制度、研修制度などを整備することで若手エンジニアの学習意欲やモチベーションを高めようとしているベンダーも多い。IT関連の一般的なスキルに加えて、「この人物はこの業界・業種のビジネス知識を兼ね備えたスペシャリストである」と対顧客向けのビジネススキルを認定する制度を設け、外から見てもはっきり分かる「できるITエンジニア」の育成を始めているベンダーもある。

 このように取り組み方は各社各様だが、取材に対応してくれたベテランPMたちが一様に口をそろえるのは、「若手を育てようというマインドを持つことはもちろん大事だが、若手を育成しやすい雰囲気や制度の整備などの環境作りがより重要」という点だ。技術革新のスピードやトレンドの移り変わりの速さが昔と比べものにならない今の時代だからこそ、「若手を育てる環境を育てる」ことをしっかりと考えていく必要があると記者は考えている。

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