東日本大震災から2年がたとうとしている。政権は変わり、円安に伴う株価上昇もあって、巷では景気のいい話もちらほら聞こえる。

 被災地にも変化が出てきた。復旧のメドとして意識される満3年まで、残り1年。復興計画の住民合意を経て、復興住宅の建築に進む自治体も出てきた。雪が消える頃には活発な動きがあちこちで見られるだろう。

 一方で、まだ十分な合意を得られない自治体もあれば、原発事故の影響で震災直後の住民が離散状態のまま、前に進めずにいる被災地もある。

 共通する課題もある。仙台のように逆に集約が進んだ地域を除き、多くの被災地では、人口の回復が見通せない。直近の人口流出を止めるためにも、基本的な都市計画と同様に、雇用創出や産業振興は重大な課題といえる。

 ただ残念なことに、被災地に対する関心は薄れている。私自身、震災発生直後から、被災地の復旧・復興を手伝っているが、被災地に足を運ぶ人の減少や、復旧・復興に関わる人の固定化が進んでいるように感じる。

情報通信技術はもっと関与できた

 こうした被災地の現状と課題に対して、情報通信技術はもっと積極的に関与できたはずだった。例えば通信を使って、被災地とそれ以外の地域をもっと緊密に結ぶことで、関心の維持・拡大はできたはずだ。また、町づくりが本格化してきた今こそ、回線の多重化などをはじめとした、基礎的なインフラ再整備のニーズは、潜在的に高まっているはず。

 また被災地には、社会全般の情報化が遅れていた地域が少なくない。一方で高齢化に伴う医療・ヘルスケア分野や観光業など、情報化が直接的に効果を発揮する分野でのニーズは地方部に共通して大きい。今回の震災をきっかけに、一気に高度化を進めることもできたはずだし、復興に関連付けたそうした構想も、あちこちで見聞きした。

 だが現実は、ばらまかれたタブレット端末が野ざらしになっていたり、クラウドへのシステム移行が頓挫したりという話が、あちこちから聞こえてくる。うまくいっている事例もあるが、総じてなかなか厳しい。

 被災地の住民や団体のITリテラシーに問題を帰する向きもある。確かに総務省の「通信利用動向調査」によれば、スマートフォンの普及率では、全国1位の神奈川県の36%に対し、岩手県は26%(33位)、宮城県は23%(39位)と、下から数えたほうが早い状況ではある。ブロードバンドの普及も似たような状況だ。

 しかし、だからこそ、被災地と情報通信技術を結び付けるチャンスがあると、私は思っている。導入が遅れたということは何も悪い面ばかりではない。都市部での検証を終えて、既に情報通信技術全般が「枯れつつある」わけだから、失敗例も含めた様々な知見が蓄積されている。最も効率が良く、ニーズに合ったシステムが、本来ならば導入可能なはずだ。

 また震災直後の通信ニーズの形態によって、老若男女を問わずケータイメールに依存していることが明らかになった。裏返せば、ケータイでメールのやり取りをできる程度のITリテラシーは、ほとんどの人が備えているということである。既に潜在能力は十二分に備わっているのだ。

 求められているのは、潜在化しているニーズの本質を見定めることにある。それを掘り起こし、ニーズとして受け入れてもらうための説得のプロセスが、今後の復興支援には必要だ。

 私自身の反省も含め、ともするとこれまでの復興支援は、支援する側の思いを被災地に押しつけることが多かったのかもしれない。しかし被災地によって状況に差が生まれつつある昨今、改めてあちこちの被災地に足を運び、被災者とともに新しい社会の姿を、語り合いたいと思っている。

出典:日経コミュニケーション 2013年3月号 p.89
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