米アップルの躍進が続いている。昨年の5月末には時価総額が約20兆円となり米マイクロソフトを抜いてIT企業で1位に、全業種でも米エクソンモービルに続く2位となった(参考記事)。その後も勢いはとどまらず、2011年6月には時価総額で米マイクロソフトを1000億ドル(約8兆円)も引き離した(参考記事)。

 忘れてはならないのは、アップルがずっと順風満帆ではなかったことだ。スティーブ・ジョブズが14年前にアップルに復帰する直前、同社は経営的に非常に厳しい状況に陥っていた。そこから復活し、大躍進を遂げられたのは、iPod、iPhone、iPadといった画期的な製品や、音楽配信、アプリ配信などのサービスを生み出してきたからにほかならない。

 ではスティーブ・ジョブズはなぜ、これほどのイノベーションを次々に起こせたのだろうか?

製品数を絞り込んで、無駄な機能を削りに削る

 筆者が編集を担当した『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則』の著者、カーマイン・ガロ氏は、スティーブ・ジョブズのイノベーションの秘密を7つの法則に分けて分析している。中でも、ITproの読者の方に興味をお持ちいただけると思うのは、「1000ものことにノーと言う」という法則だ。

 スティーブ・ジョブズの復帰直前、アップルには15種類のプラットフォーム、350もの製品があったが、これを4種類、10製品にまで一気に減らした。製品を徹底的に絞り込んで集中させる。集中させて最高のチームを全製品に投入し、開発サイクルを18カ月から9カ月に短縮した。

 本書には、次のようなジョブズの言葉が引用されている。

(イノベーションは)1000ものことにノーと言う必要があります。

集中するとかピントを合わせるとかいうのは、集中すべき案件にイエスと言う
ことだと思われるのが普通です。それは大きなまちがいです。集中すべき案件
ではない、100種類もの優れたアイデアにノーと言うことなのです。

 そのうえでジョブズは、それぞれの製品の機能も絞り込み、シンプルで使いやすくしていった。それまであった他社の音楽プレーヤーにはたくさんのボタンやダイヤルが付いていたが、iPodではスクロールホイールだけを搭載。同様に他社のスマートフォンには多くのボタンやキーボードが付いていたが、iPhoneではホームボタン1個だけにした。普通の企業なら、ライバル会社の製品に見劣りしてはいけないと、逆に機能を追加してしまう。ところがジョブズは、逆にあらゆることに「ノー」と言い、削りに削ってわかりやすく、使いやすくしているのだ。

 こう言うと、「スティーブ・ジョブズみたいな天才だからできること」「アップルならできるが、うちの会社には到底無理」という声がよく上がる。確かに、製品数を30分の1の数に減らしたり、他社の製品とまったく違うものを出したりするのは大きなリスクがある。それだけの判断ができる人は多くはない。「無理」だと言いたくなる気持ちもわかる。

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