2010年12月18日、講演のため博多へ行った。博多では2002年以来、仕事をさせてもらう機会が多くしょっちゅう来ているのだが、講演するのは初めてだった。会場は博多港に面した福岡国際会議場だ。受付で100人あまりの参加者名簿を確認して思わずにっこりした。筆者が自らダイレクトメール(電子メールではなく封書)を送った10社あまりの企業のうち、2社が来てくれていたからだ。

 講演のテーマであるスマートデバイスのアプリケーションと次世代WAN(Wide Area Network)の提案対象になりそうな会社を調べてダイレクトメールを送ったのだ。講演の中で紹介する次世代WANの事例は、新型広域イーサネットを使っていることと、QoS制御に優れる国産ルーターを全面採用して外国製ルーターをリプレースしたことが特徴だ。この事例に関心を示しそうな企業を選んだ。

 秋から冬にかけて10数回の講演をしたのだが、スマートデバイスとならんで次世代WANへの関心が高い。講演の後、訪問してお客様と会話すると、役員・部長クラスと実務レベルとでは反応が違っていて面白い。前者は特定のベンダーにこだわらず客観的なメリットがあるかどうかだけに関心を持つのだが、後者には特定の製品に強いこだわりを持つ人がいる。この2~3カ月でお会いした人の中でも2~3人そんな人に出会った。それらの人から聞いた言葉で一番強烈だったのは、「設計なんて誰でもできる」というものだった。

 今回はこの言葉を手がかりに「設計」で大事なことは何か、ネットワークエンジニアの仕事の価値を高めるために何を指向すればいいのか、述べたい。

「選択」できない人に設計はできない

 結論から書こう。「設計なんて誰でもできる」というのは間違いだ。おそらくこの言葉を吐いた人が言いたいことは「設計は大雑把なものであって細かな知識がなくてもできる。しかし、その設計を実現するコンフィグを考えて作成し、機器に設定する『実装』は、技術と製品に精通していないとできない」ということだろう。特定のベンダーの製品にこだわりが強い人ほどこんな意見を持っている。 

 だが、製品に精通していることが、設計の場面では大きな障害になることを忘れている。設計で大切なことは、要件に最適な技術や製品を客観的に選択することだ。ところが、特定の製品に精通した人はその製品を前提に設計しようとする。それでは設計にならない、ということに気づいていない。 

 図1はネットワークの仕事を階層的に表したものだ。ニーズの分析や設計ポリシーの策定を行う「企画」、適用技術やネットワーク構成を決める「基本設計」、コンフィグ作成や移行手順書を作成する「詳細設計・テスト」、コンフィグ設定と機器設置を行う「インストール・工事」、「運用・保守」の五つに分類している。

 「設計なんて誰でもできる」というときの「設計」は、企画と基本設計のを指している。企画や基本設計ではニーズやシーズを大づかみにして本質をとらえることが重要だ。たしかに大雑把な仕事だが、もやもやしたものをクリアにしていく作業は誰にでもできることではない。

 基本設計の最後にするのがネットワーク機器の選定だ。要件を充足する最適なネットワーク機器を客観的に選ばなければならない。コンフィグ作成など詳細設計以降の仕事は、ネットワーク機器が特定されなければできない。

 図1で基本設計と詳細設計の間の線が二重線になっているのは、企画・基本設計と詳細設計以降では求められる能力がまったく違うからだ。前者は「設計」の能力であり、後者は「実装」の能力とまとめることができるだろう。

図1●ネットワークの仕事の階層
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