メーテルリンク作の童話「青い鳥」をご存知でしょうか。チルチルとミチルが、幸せを招く青い鳥を探して冒険旅行をしますが、どこにも見つかりません。家に戻ると、自分たちが飼っていた鳥が、青い鳥だったというお話です。今回は、私が職場で出会った青い鳥を紹介します。ここで、青い鳥とは、自分と同じ職場にいて、小さな幸せを感じさせてくれる人のことです(登場人物の名前は、仮名です)。

爽やかな風のようなプロダクトマネージャ

 篠山君は、パッケージソフトのプロダクトマネージャです。いつも笑顔で、クレーム対応をしているときでさえ、白い歯がこぼれています。格闘技が趣味であり、休日になると、あちこちの道場を巡って武者修行しているそうです。小柄なのですが、背筋がピンと伸びてスマートで、立ち振る舞いがキビキビしています。彼がそばを通るだけで、爽やかな風が吹いたように感じます。ふだんは、女性にまったく興味がないような態度をしていたのですが、いつのまにか、取引先の美女を射止めました。これは、きっと武者修行の成果なのでしょう。皆が、爽やかな篠山君の結婚を心から祝福しました。

技術への興味がつきない課長

 松下課長は、技術部門の管理者として数名のエンジニアの面倒を見ています。ある日、テキスト形式のデータファイルを整形する単純な作業がありました。松下課長は「テキストエディタにマクロ機能(一連の作業を自動化する機能)があるようだから、それでやってみれば」と提案しました。ところが、エンジニアたちは、マクロ機能の説明書を読むのが面倒なので、手作業でデータファイルの整形を始めました。作業が半分ほど終わったころ、「できたよ!」と嬉しそうに言って、松下課長が自作のマクロを持ってきました。そのマクロによって、残りの作業は一瞬で終わりました。エンジニアたちは、「松下課長って、本当に好きだよね」と苦笑しつつ、自分たちの技術者らしからぬ態度を恥じました。

自ら進んでトイレ掃除をするリーダー

 武部君は、プログラミングチームのリーダーであり、若手プログラマを指導しながら、自らもプログラミングしています。毎日17:00からは掃除の時間であり、皆が順番で掃除当番をしています。ただし、リーダー以上の者は、掃除当番をしなくてよい決まりです。トイレに行くと、何とリーダーである武部君が、一生懸命に掃除をしています。チーム内で何か失敗をやらかして、その罪滅ぼしとして掃除をしているのかと思い、からかい半分に声をかけてみると、「若手連中が、プログラミングに集中して掃除当番を忘れているので、代わりにボクが掃除をしているのです」とのことです。何と素晴らしいリーダーなのでしょう。私は、トイレを汚さないように、いつもより2歩前進して用を足しました。

叱られてもケロッとしている営業マン

 吉沢君は、20代の若き営業マンです。ただし、その風体は、大きな顔に、大きな眼鏡、そして大きなお腹、40代に見えるほど貫禄十分です。さらに声も大きくて、彼が取引先と電話していると、その声がオフィス中に響き渡ります。営業マンになるべくして生まれたような男に見えるのですが、営業成績はまるでダメでした。ある日、吉野君が上司に叱られている場面に遭遇しました。上司は、顔を真っ赤にして「お前なんかクビだ!」と怒鳴っています。吉野君は、黙ってうつむいています。もしかしたら、本当にクビになってしまうのでしょうか。心配になった私は、しばらくしてから営業部の様子を見に行きました。すると、どうでしょう。吉野君と上司が、大笑いしながらケーキを頬張っているではありませんか。「クビだ!」からまだ1時間も経っていないのに、いつもの明るい関係に戻れる二人の大らかさ、私は、感動しました。

親会社の社長と友達関係の平社員

 園田君は、入社3年目の平社員です。親会社の担当者を恐れていて、電話があると「外出中ということにしておいて」と言って逃げています。ある年の忘年会に、その親会社の社長が参加しました。皆は、恐縮して、いつものようにハメをはずせません。そんな中、園田君だけは、やけにご機嫌です。何とビックリ、親会社の社長の隣の席で、お酒を注ぎ合って談笑しています。この不思議な関係は、いったいどういうことなのでしょう。園田君の同僚に聞くと、お互いにボーリング好きで、よく一緒に遊んでいるそうです。園田君は、ボーリング場では、仕事の話を一切しないのでしょう。「怖い担当者をどうにかしてくれ」と頼まないのでしょう。親会社の社長と、友達のようにボーリングを楽しんでいるだけなのでしょう。まるで漫画の「釣りバカ日誌」に出てくるスーさん(社長)とハマちゃん(平社員)のようです。

 かつて「青い鳥症候群」という言葉がありました。これは、現在の職場に不満を感じ、自分を活かせるもっとよい職場があるはずだと思い、転職を繰り返すことを指します。もしも、この症状になってしまったら、現在の職場にいる青い鳥を探してください。少しは症状が改善するでしょう。もしも、よろしければ、このコーナーへのコメントとして、その青い鳥をご紹介ください。皆様の書き込みをお待ち申し上げます。