写真1●筆者がNECで実施した社内向け講演会
VOD(ビデオ・オンデマンド)の一場面。
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 4月24日,NECで社内向け講演会を行った(写真1)。会場は100人収容のセミナールームだったのだが,講演の周知をしてわずか1日で100名を超える申し込みが来た。事務局の人が会場に入れない人たちのために,自席のパソコンでリアルタイムに視聴できるようにしてくれた。こういうことがサッと出来るのはさすがだ。それにしても,たくさんの人に関心を持ってもらえたのは嬉しかった。

 講演のテーマは「これからの企業ネットワークとNWビジネスの在り方」というものだ。最初に言ったのは「耳ざわりのいいことばかり話したりしませんよ。皆さんがそうだそうだ,と思うようなことを話しても役に立たないでしょ。それはもう皆さんが持っているものだから。皆さんがムッとするかも知れないけど,皆さんと違う考え方や感じ方を話したいと思います」。でも,話し始めると何度も笑って面白そうに聞いてくれた。

 さて,今回のテーマはこの講演でも触れた「ブランドや舶来品を必要以上に有難がるのはやめよう」というのに関連する。Google Voiceなんて日本のユーザーには不要,という話をしたい。

Google Voiceとは

 Google VoiceはGoogleが3月に発表した電話サービスの呼称で,単なるインターネット電話ではなく,ユーザーが持っている自宅や職場の固定電話,携帯電話,Skypeなどの電話を統合管理する機能を持っているのが特徴だ。ただし,サービス開始時期は明確ではなく,この原稿を書いている2009年5月現在では一部の先行ユーザーに提供されているだけで,一般ユーザーに開放される時期は示されていない。

 Google Voiceで電話を統合すると,どの電話にかかってきても登録しているすべての電話のベルを鳴らしたり,留守番電話の録音を一つにまとめることができる。外出中に固定電話にかかった電話を携帯で受けることができるし,それぞれの電話の留守電をチェックしなくてもGoogle Voiceの留守電を聞けばよい。このほかにも,留守電の音声をテキスト化して検索可能にしたりメールで送信できる機能,相手を確かめてから電話に出る機能(留守電で応答し,相手の声を聞いてから受話機を取る),発信者に応じた着信先指定,など盛りだくさんの機能がある。

 Google Voiceのアイデア自体は新しいものではない。筆者は5年ほど前にシリコンバレーのベンチャー企業でそっくりのデモを見せてもらったことがある。その時の感想は「こんなのいらない」。そもそもそれほど電話を使わないし,3種類,4種類もの電話を使い分けたりもしていない。会社の固定電話とケータイくらいだ。

米国人は電話好き

 こんなサービスを喜ぶのは電話のヘビーユーザーだけだろう。ひょっとしたら,米国人には電話のヘビーユーザーが多いのかもしれない。そう思って統計データをネットで探したのだが,これというのが見つからなかった。ところが,情報化研究会の記事を読んだ方がいい資料を教えてくれた。連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)の無線通信局のレポートだ。これによると,2007年下半期の携帯電話の1ユーザーあたり平均月間通話時間は769分,13時間弱となっている。1日あたりだと約25分だ。

 日本では,携帯1台あたり1日の平均通話時間は2006年時点で3分10秒(2008年度情報通信白書)。FCCのレポートには欧州やアジア諸国の通話時間も出ている。ちなみに,英国は1日約6分,ドイツは約3分,韓国は約10分だ。米国は携帯の通話料が安いとはいえ,その電話好きは突出していると言えるだろう。

 以前,このコラムで書いたように日本では固定電話のトラフィックも激減している(「メールが電話より3倍エライ理由---IP電話の採算を見直そう」を参照)。日本ではコミュニケーションの主役はメールになっているのだ。メールの利用に関する統計は眼にしたことがないのだが,昨秋,約300人が参加したセミナーで挙手によるアンケートを取ったことがある。「1日に5本以上電話がかかっている人,挙手してください」と言って手をあげたのは1割程度だった。「1日に50通以上メールを受信する人」と聞くと,過半数が挙手した。日本ではコミュニケーションの手段が電話からメールへシフトしているのは明らかだ。

 ということで,電話が大好きな米国ではGoogle Voiceのニーズはあるかも知れないが,日本で必要とする人は100人に1人もいないだろう。米国でも使われるだろうか,という疑問はある。コミュニケーション・ツールとしてややこしいからだ。

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