本コラムの著者プロフィールを見た方はご存知かと思いますが,私はこの5月,約5年勤めたサイバーテックを退職し,2度目の転職をしました。

 1度目は,新卒入社の約1年後。もっともっと力を蓄えられる厳しい環境で働きたいと思い,ささっと最初の転職をしてしまったんです。6年の間に2度の転職。早いサイクルだと思われる方もいるかもしれません。

 確かに転職については,いろいろな意見があります。私の周囲にも,1カ月で会社を辞めてしまった人もいれば,10年以上勤めて初めて転職した人,中には「絶対に転職なんてしない」と言う人もいます。今回は,私の人生の中で最もインパクトの大きかった「2度目の転職に至った理由」をお話ししたいと思います。

「退職したい」と思ったきっかけは……

 転職指南サイトなどを見ると,退職するときには「スキルアップや社会貢献」という前向きな理由を持つようにと書かれています。確かにその通りだと思います。周囲の転職経験者に聞いても,「もっと大きい仕事をやってみたかったから」とか「自分の力を試したかったから」という人ばかり。まあ中には「今の給料だと,妻子抱えて家のローンは難しいので」という人もいましたけど。

 実は,私の当初の退職理由は,超マイナス志向なものだったのです。

 みなさんも経験ありませんか? 開発をしながらも,ふと心をよぎる「辞めたいなあ……」という思い。それを本当に行動に移すかどうかは別ですが,私はある開発案件に携わったことで,その思いに強く捕らわれることになったのです。

 その案件は非常に厳しいものでした。来る日も来る日も,山のようなテスト項目と騒音唸るテストサーバーに囲まれていた私。ヘルプの後輩エンジニアが来ても,自分のことで精一杯で,指示もろくに出せませんでした。

 自宅に戻って寝ても,悪夢にうなされ,すっきりしない頭で起きると,不具合報告のメールが届いている……。「そんなの普通だよ。寝られるだけマシだ!」って思う方もいらっしゃるでしょう。もちろん私も,それまでに,終電,徹夜,休日出勤といった厳しい開発を幾度となく経験してきました。でも必ず,納品終了後は「はー,今回もお疲れ様でした!」と,笑うことができたんです。

 それが,あの開発のときだけは,終わっても気持ちはまったく浮上しませんでした。そして納品が終わる頃,私は上司のAさんに「会社を辞めたい」と告げました。するとAさんは「なぜ」と私に問いかけました。そして私はこう答えたのです。「働きたくない。休みたいんです」と。

部署異動で気分一新,自分を見つめ直す

 私は結構,明るいタイプの性格です(自分で言うのも?ですが……)。普段の私からは想像できないあまりの暗さにAさんもビックリ仰天!! 親身になって,なぜ辞めたいという気持ちに至ったのかを一生懸命聞き出そうとしてくれるのですが,私はもう“辞めたい病(?)”にとりつかれていたので,「当分働くつもりはないんです」「海外にでもいきたい(←王道?)」などと,今となっては社会人として赤面モノの発言を繰り返すばかり(反省しています。Aさん,すみませんでした)。

 とはいえ,すぐに辞められるわけではありませんでした。みなさんもご存知の通り,ソフトウェアの開発においても,「瑕疵(かし)期間」があります。一般的な請負契約では,納品・検収後の半年~1年間は,開発側のミスが原因で不具合が発生した場合は,無償で対応するのです。

 当時,その開発案件を一番よく把握していたのは私でした。しかも,他のメンバーも既に他の案件を抱えている状態。ということで,私の退職は一旦,保留となりました。しかし,今のままの精神状態で次の案件にアサインするわけにはいかないとAさんは判断し,部署異動となりました。

 その時,新卒時に入社した会社の先輩にこういわれたんです。「転職して全然違う業界にいくなら,すぐに辞めた方がいいと思う。でも,IT業界にいるなら,もうちょっと考えた方がいいと思うよ。グループや部署が替わると,今の思いも変わるかもしれないから。

 言われたときは「はぁ? そんな簡単に気持ちは変わるもんじゃない」と思っていましたが,今では,この言葉は本当だったんだなあと感謝しています。確かにあの時,私が強行に「辞めたい!」と言い続けていたら,辞められたかもしれません。でも,そうして辞めても,働くことへの意欲や夢をもつことはできなかったと思います。もしかしたら,IT業界から去っていたかもしれません。

 部署異動をして,会社・組織・仕事というものを別の視点から見たことで,もう一度,冷静に自分のやりたいことや仕事への思いを見つめ直すことができました。

本当にやりたいことに携わるために転職を決意

 異動後は,技術担当としてプリセールスを行ったり,セミナーやイベント企画を行ったりするのが主な仕事でした。デモプログラムを作成すると,営業やマーケティングの人が喜んでくれたり,頼ってくれたり。そんな日々を過ごしていくことで,「みんなの役に立っているんだ。貢献できているんだ」という気持ちを持てるようになりました。

 また,外出していろいろな人と出会うことが刺激となり,徐々に笑顔で仕事に携わる時間も増えてきました。そして「働くってやっぱり楽しい」と思うようになれたのです。

 気がつけば瑕疵対応の期間も終了。来期の目標を決める時期が近くなりました。次の誕生日がくると,私も30歳。そろそろ次のステージにステップアップしたい,と考えるようになりました。そう,本腰をいれて転職をしようと思ったのです。

 会社としては,部署異動で落ち着いてくれれば……という考えがあったと思います。つたなかったプログラマの私を育ててくれ,また今回のような私の気持ちにも付き合ってくれた会社や上司,同僚のみなさんに深く感謝しています。でも,どうしても私は,今までの経験を「新しい職場,新しい環境で,試してみたい!」と,考えるようになってしまったのです。

 以前とは違い,前向きに将来のことを考えた上で退職話を切り出すと,Aさんも,同僚も最後には「がんばれ」と言ってくれました。

 そのときB先輩に言われた言葉がじーんと胸にしみました。「ぼくたちが納得して快く送り出せる,伊藤さんに戻ってくれて本当によかった。いなくなるのは寂しいけど,うれしいよ」

 自分の中で前向きに人生を考えられるようになったからこそ,退職~転職の一歩がうまく踏み出せたんだ,と思います。

 次回は,私の転職活動秘話(?)について,ご紹介します。