前回,PMBOKガイドで定義する三つの見積もり技法について解説しました。今回は,ベーム博士が提唱する七つの技法について解説しましょう。

 ベーム博士はCOCOMOを提唱した人です。その著書「SOFTWARE ENGINEERING ECONOMICS」(1981年)の中で,工数に関する見積もり技法を以下の七つに分類しています。

(1)類推法(Estimation by Analogy)
(2)トップダウン法(Top-down Estimating)
(3)数式モデル法(Algorithmic Models)
(4)ボトムアップ法(Bottom-up Estimating)
(5)専門家判断法(Expert Judgment)
(6)プライス・ツー・ウィン法(Price to Win Estimating)
(7)パーキンソン法(Perkinsonian Estimating)

 このうち(1)~(4)は,前回紹介したPMBOKガイドの三つの分類に相当します。PMBOKガイドの類推(トップダウン)見積もりは,(1)類推法と(2)トップダウン法に分けています。

 では,そのほかの技法にはどんなものがあるのでしょうか。(5)の専門化判断法は,専門家チームによる見積もりのこと。経験や知識を有する専門家でチームを組み,「デルファイ法」などを用いて見積もり値に対する合意を得ていく方法です。

 専門化判断法は,米国で注目を集めた時期もありました。しかし,現在はほとんど使われることがなくなりました。私もあまりおススメできる方法ではないと考えています。その理由は,前々回取り上げた「見積もるのは誰?」に関連します。専門家とプロジェクト・メンバーの考えが一致するとは限りません。ですから,見積もった値に対するメンバーがオーナーシップ意識を持てるかどうかに疑問を感じます。

 (6)プライス・ツー・ウィン法と,(7)パーキンソン法は,ベーム博士が“やってはいけない”と戒めを込めて分類した見積もり技法です。

 プライス・ツー・ウィン法は,顧客予算に合わせて見積もりを作成するようなやり方です。もちろん,予算を意識するのは大事なことです。しかし,論理的な根拠もなく予算に合わせて見積もることは避けるべきです。

 一方のパーキンソン法は,利用可能なリソースのみを基に見積もることを指しています。例えば,今回のプロジェクトでは,これだけのメンバーを集められるから見積もりもそれに合わせる,といったやり方です。制約条件を意識することは大事です。しかし,開発側の都合だけで見積もってもプロジェクトはその通りに進行しません。

 パーキンソン法は,「仕事は利用可能な時間やリソース量を埋め尽くすように拡大する」というパーキンソンの法則をもじったものです。

 以上,2回にわたってPMBOKガイドとベーム博士が提唱する工数見積もりの技法を見てきました。このほかにも「ソフトウエアを定量化するための技法」が必要となります。これは規模見積もりの段階で使うものです。詳しくは次回,見ていきましょう。

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