今回と次回は,見積もり技法の分類を考えます。見積もり技法は細かく分けるとたくさんあるのですが,今回取り上げるのは「工数見積もり」に分類される技法です。

 「PMBOKガイド」では工数見積もりの技法が三つ紹介されています。「類推(トップダウン)見積もり」「係数モデル見積もり」「ボトムアップ見積もり」です。この三つを知っておけば,現実的には困らないでしょう。

 類推(トップダウン)見積もりは,過去の事例や経験から類推する技法です。まず全体のリソース量を見積もってから,個々の作業に配分します。最も簡単に使えますが,見積もり精度は低くなります。属人的な方法であり,見積もる人の能力に精度は大きく依存します。

 係数モデル見積もりは,基準値(生産性係数)や数式などの「見積もりモデル」を使って,工数を算出する技法です。成果物やプロセスの特性をパラメータ化して,見積もりモデルに当てはめます。代表的なモデルとしては,ベーム博士が提唱した「COCOMO」(1981年)や「COCOMO!)」(1995年)があります。

 係数モデル見積もりの精度は,中程度ぐらいでしょうか。正確に言えば,見積もり精度は蓄積されたデータ数やサンプル数に依存します。モデルのチューニング次第で精度が大きく変わります。

 最後のボトムアップ見積もりは,成果物や作業を分解し,構成要素ごとのリソース量を見積もって積み上げる方法です。ソフトウエアを構造化して機能単位に見積もる方法や,実施する作業をWBS(Work Breakdown Structure)に分解し,WBSごとに工数を見積もる方法があります。見積もり精度は高いのですが,分解すること自体が設計や計画作業に当たるため,ある程度,工程が進まないと使えません。

 ボトムアップ見積もりは,見積もり結果が高目に出ると言われています。分解することによって「気づき」が促進され,抜けや漏れがなくなるからです。全体をバラすとどうしても構成要素ごとに余裕を持たせるため,積み上げるとリソースが膨らむ傾向もあります。

 これらはプロジェクトの段階に応じて,使い分けます。粗く言えば,試算見積もりでは主に類推(トップダウン)見積もり,概算見積もりでは主に係数モデル見積もり,詳細見積もりでは主にボトムアップ見積もりを使うとよいでしょう。

 実際の見積もり現場では,これらを組み合わせて使います。試算見積もりの段階でもボトムアップ見積もりとまでは言えないまでも,バラせるところはバラして見積もることが大切です。

 次回は,見積もり技法のもう一つの分類を紹介しましょう。

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