2009年8月3日~8月20日に実施した今回の「SaaS/ASP利用実態調査」では,「所属する企業・組織で自社あるいは自部門の情報システムにかかわる仕事を担当している」とした回答者1679件のうち,「関与している情報システムで,現在SaaS/ASPを使っている」とした回答者が339 件(20.2%),試用中や計画中,検討中を合わせると698件(41.6%)だった。

 調査対象(母集団)は2008年8月に実施した「SaaS/ASP利用実態調査2008」と同じ日経BPコンサルティングの調査モニターで,回答総数もほぼ同じ(前回1692件,今回1679件)だが,その中で「SaaS/ASPを使っている」とした回答数は,前回の164件から今回は339件へと 2倍以上に増えた(図-1)。

図-1●担当している情報システムでのSaaS/ASPの利用状況
図-1●担当している情報システムでのSaaS/ASPの利用状況

予定中や検討中の比率では「Office」「SFA」が上位に

 「(何らかの)SaaS/ASPサービスを使用中ないし試用中/計画中/検討中」とした全698件の回答内容から,具体的な用途分野ごとの使用/計画状況を分析したところ,「使用中(今後も使い続ける予定)」の比率が最も高かった用途分野は「社内・グループ間情報共有」で12.6%。次いで「メール配信」(10.2%),「Webサイト・携帯サイト構築」(8.3%)だった(図-2)。

図-2●各アプリケーション分野(15分野)のSaaS/ASPサービスの利用状況/利用計画(n=698)
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 一方「(現在は使っていないが)使う予定が具体的にある」と「今後使用を検討する可能性がある」とした回答者を合計した比率では,トップは「社内・グループ間情報共有」分野の43.5%だが,これに次いで「Officeソフト」が2位(「SaaS/ASPを使用中」では15分野中最下位),「SFA・営業支援」が3位(同8位)に大きく上昇する。

SF.comが最多だが,激戦区は「メール」と「情報共有」

 「現在SaaS/ASPを使っている」とした339件の回答者に,「SaaS/ASPを使っている最も重要な分野」および「SaaS/ASPを使っている2番目に重要な分野」で使っているサービスと提供ベンダーについて,自由記入方式で回答を求めた(表-1)。

表-1●重要分野で利用しているSaaS/ASPの事業者名/サービス名
「最重要」または「2番目に重要」な分野として使用しているSaaS/ASPの事業者名/サービス名トップ10(自由記入方式,5件以上)
セールスフォース ・ ドットコム(Salesforceなど) 17件
Google(Google Appsなど) 11件
大塚商会(アルファオフィス,アルファメールなど) 10件
マカフィー(Total Protection Serviceなど) 9件
NEC(AG NEHOPS,NetSociety for ISMSなど) 9件
富士通(CRMateなど) 8件
IIJ(セキュアMXなど) 7件
アイティーブースト(配配メール,メールディーラー) 6件
ビック東海(OneOffice Mail Solution) 5件
リスモン・ビジネス・ポータル(J-MOTTO) 5件

 今回,回答者が実名を挙げたSaaS/ASPベンダーは約120社。最も多くの回答者が挙げたのは前回調査と同じくセールスフォース・ドットコム(SF.com)の17件。使用分野も前回(11件)と同じく「SFA・営業支援」と「CRM・顧客管理」にほぼ2分されていた。

 次いで多かったのはGoogleの11件(前回5件)。その使用分野は「メール配信」と「社内・グループ間情報共有」にほぼ2分。大塚商会(前回6件)は今回10件。Googleと同じ「社内・グループ間情報共有」と「メール配信」に加え,「CRM・顧客管理」分野でも複数の回答者から名前が挙がった。

パートナー事業者経由の利用事例が増え始めた

 J-MOTTOブランドでdesknet's(開発元はネオジャパン)をSaaS/ASPとしてサービスしているリスモン・ビジネス・ポータルが,「社内・グループ間情報共有」と「メール配信」分野で5回答者から挙がった。desknet'sはほかに,ネオジャパンなどを提供事業者として3件の回答者からも名前が挙がっている。ちなみにサイボウズ製品(サイボウズOfficeなど)も,サイボウズ自体を提供事業者名に挙げた回答と,パートナーのファーストサーバなどを事業者名に挙げた回答を合計すると,8票を得ていた(分野はほぼすべて「社内・グループ間情報共有」)。

 マカフィーはほぼすべて「セキュリティ」,IIJ(インターネットイニシアティブ)は「セキュリティ」と「メール配信」分野で得票。アイティーブーストとビック東海の使用分野はほぼすべて「メール配信」である。富士通とNECは分野,サービス名ともばらばらだった。

 まとめると,SFA/CRM分野ではSF.comの独走が続いている。利用企業が多い「情報共有」や「メール配信」分野は自社でSaaS/ASPを提供するGoogleや大塚商会,アイティーブーストなどと,パートナーも含め展開するネオジャパンやサイボウズが競いながら市場を拡大している。リスモンやファーストサーバなど,他社の有力なパッケージ・ソフトをSaaS/ASPで提供するパートナー事業者が実績を挙げ始めたのも,今回の調査結果の特徴だ。


※調査概要
 日経BPコンサルティングの調査モニターのうち,「所属する企業・組織で自社あるいは自部門の情報システムにかかわる仕事を担当している」とした回答者を対象に,SaaS/ASP利用の現状と計画,利用開始時期やコスト,利用開始前と開始後の期待効果と不安要因,不満点,利用開始予定時期や予定分野,期待する効果やコスト削減率などを聞いた。
 調査時期は2009年8月3日~8月20日。全回収数(1896件)のうち,SaaS/ASPを使用していると回答した339件,および使用を計画,検討,試用していると回答した359件の合計698件を有効回答とした。有効回答者の所属業種は製造業が33.8%,流通業が11.7%,サービス業(金融関連,情報処理を除く)が14.5%,政府・自治体・公共が9.2%,金融/証券/保険業が5.6%など。有効回答者の担当システムの範囲(複数回答)は全社情報システムへの関与者が83.5%,部門情報システムへの関与者が31.5%,事業所の情報システムへの関与者が28.7%,ワークグループの情報システムへの関与者が15.3%。
※参考文献
本記事は、日経マーケット・アクセスが2009年9月30日に発行した『SaaS/ASP利用実態調査2009-2010』を参考に執筆しました。詳細はこちらをご覧ください。