システム開発において,赤字プロジェクトの解消は昔から大きな課題である。その点において,ここ数年のシステム・インテグレーション市場は“金融特需”に沸き,大手ベンダーは「赤字プロジェクトを大幅に圧縮した」として好決算を連発してきた。だが今,サブプライムローン問題が引き金となって世界的な景気後退が起こりつつあり,予断を許さない。

 そんな景気の転換点にあって,システム開発における赤字プロジェクトの現状と今後の見通しを探るべく,ITproは「赤字プロジェクトに関する調査」を実施した。調査期間は2008年9月25日~10月2日。863人から回答を得た。

プロジェクトの半数近くが「赤字」か「赤字スレスレ」の綱渡り

 まず,現時点におけるシステム開発プロジェクトの収支状況を見てみよう(図1)。最も多い回答は,「赤字ではないが,利益も出ていない」(30.1%)だった。厳しい環境の中で,プロジェクトのおよそ3分の1は赤字スレスレの“綱渡り”をしていることが分かる。これに「赤字」の15.7%を加えると,プロジェクトの半数近くは「改善が必要な状態」ということになる。

図1●プロジェクトの収支状況(見通しを含む)
図1●プロジェクトの収支状況(見通しを含む)

 プロジェクトが「赤字」あるいは「赤字スレスレ」に陥った理由としては,「システム化の要件がなかなか確定せず,変更が多かった」が55.2%と,群を抜いてトップだ(図2)。これに「必要な人員(スキル,人数)や体制が整っていなかった」(45.1%),「予算(あるいは請負金額)が不足していた」(36.4%)が続く。いずれも,昔から赤字の原因として指摘されてきたことであり,問題の根深さがうかがえる。

図2●プロジェクトが「赤字」または「赤字スレスレ」の状態になった理由(複数回答)
図2●プロジェクトが「赤字」または「赤字スレスレ」の状態になった理由(複数回答)

 ちなみに,収支が「黒字」という回答者にも,黒字になった理由を尋ねてみたところ,興味深い結果が得られた。「たまたま今回は黒字だった」という理由が14.8%もあったのだ。赤字の理由として「たまたま今回は赤字だった」とする回答が2.3%しかなかったことを考えると,「たまたま黒字」の割合が非常に高い。これは「赤字になりやすく,黒字になりにくい」「ちょっとしたトラブルで収支が大きく変動する」という現状の表れではないだろうか。

プロジェクトが複雑化しているのに,赤字プロジェクトは減少傾向

 さて,プロジェクトが赤字に陥る最大の理由は「システム化の要件がなかなか確定せず,変更が多かった」だが,背景には「プロジェクトの複雑さが増した」という現実がある(図3左)。回答者の7割以上がそう考えている。グラフにはないが,「複雑さ」の内容を聞くと,「システム化の対象となる業務の複雑さが増した」が67.8%と圧倒的多数だった。ユーザー企業自身が業務の複雑さを整理しきれず,結果として「要件がなかなか決まらない」「変更が多くなる」と考えられる。

図3●プロジェクトの複雑化と赤字の動向
図3●プロジェクトの複雑化と赤字の動向

 プロジェクトの複雑化は,プロジェクト・マネジメントを一層難しくする。それだけ赤字に陥る可能性も高くなるはずだ。しかし,図3右のグラフが示すように,以前と比べ,赤字プロジェクトは減少する傾向にある。

 以前と比べて赤字プロジェクトが減った要因の上位は,図4のように「周到なリスク・マネジメント」(48.9%)や「進捗管理の徹底」(47.8%),「工程ごとの完了レビューへの注力」(35.0%)など。プロジェクト・マネジメントの基本を忠実に実践しながら,赤字回避のためのスキルを高めてきたとみられる。

図4●以前と比べて赤字プロジェクトが減った要因(複数回答)
図4●以前と比べて赤字プロジェクトが減った要因(複数回答)

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