金融、通信、運輸などの社会システムで相次ぐ障害。「システムの信頼性」に対する社会の注目度は依然として高い。システム障害が原因の業務停止リスクに対する経営者の認識も高まる一方だ。

 当然、IT部門も信頼性への取り組み強化を求められる。年間に1回でも「役員に報告するシステム障害」を起こした企業の割合は07年度で56%。前年度の69%に比べると大きな改善があった(図1)。企業規模別で見ると、保有システム数の多い大企業は不利になる。1000人未満の企業が49%なのに対し、大企業は71%だった(図2)。

図1●役員に報告するシステム障害数の分布
図1●役員に報告するシステム障害数の分布
図2●企業規模で見た役員に報告するシステム障害数の分布
図2●企業規模で見た役員に報告するシステム障害数の分布

保守運用費7億円当たり1トラブル

 図には示していないが、年間の保守運用費(ソフトウエア費用を除く)と障害件数の相関を試算してみた。すると役員に報告するシステム障害は保守運用費7億円当たり1件発生するとの結果が出た。自社の障害発生頻度を評価する一つの目安になるだろう。

 役員に報告するシステム障害のうちで「事業中断に至るシステム障害」の発生状況を尋ねた。すると全体の31%で事業中断に至るシステム障害が発生していることがわかった。こちらは年間の保守運用費17億円当たり1件発生する計算だ。

 企業別に見ると、従業員1000人未満の企業は30%、1000人以上の企業は31%とほぼ同じだった。役員に報告する障害の発生比率は大企業のほうが22ポイント高かったことを考慮すると、大企業のほうがシステム障害対策やBCPの策定と実施は進んでいると判断できる。

 「万が一」への備えは、実際に痛い目に遭わないと進まない。事実、役員に報告する障害が多い企業ほどBCPの策定は進んでいた。BCPを「策定済み」または「策定中」と回答した企業の比率は、障害発生件数0件のグループでは28%なのに対し、3件以上のグループは52%と2倍近かった。

図3●基幹業務システムに対するバックアップの取り組みと障害発生の関係
図3●基幹業務システムに対するバックアップの取り組みと障害発生の関係
システム障害が1件以上発生した割合で比較した

 BCPの実施策としてバックアップマシンの設置がある。1カ所でバックアップする企業は全体の4割だ。複数拠点でバックアップする企業(全体の18%)は、バックアップなしの企業(同42%)に比べて役員に報告する障害が15ポイント多いが、事業中断に至る障害は7ポイント少ない(図3)。

 複数拠点でバックアップすると、ネットワーク障害にも強くなる。このため役員に報告する障害が発生しても、事業中断にまでは至りにくくなることもわかった。

ハードとネットワークが主因

図4●事業中断に至るシステム障害の原因(複数回答)
図4●事業中断に至るシステム障害の原因(複数回答)
障害の原因として多かったものについて1位と2位を回答してもらった
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 事業中断に至るシステム障害の発生原因の1位と2位を挙げてもらったところ、「ハードウエアの故障」が計45%と最も多かった(図4)。「ネットワーク(キャリア側)の障害」が計36%で続いた。ネットワーク関連は自社側の故障・運用ミスを合わせると、計69%で最多になる。役員に報告する障害の発生原因も傾向はほぼ同じだった。

 信頼性向上への施策はまだ改善の余地がある。図には示していないが、回答企業の48%は開発時に品質目標を決めていなかった。基幹システムの稼働率目標を設定していない企業も40%存在する。

 システムの全体像を把握するベテラン技術者の引退前に全社のシステムマップを作成するなど、やるべきことは多々ある。SOA(サービス指向アーキテクチャ)を取り入れて“枯れた”既存システムをサービスとして活用したりSaaSを利用するなど、“作らないシステム開発”にシフトすることも検討に値するだろう。

出典:日経コンピュータ 2008年6月15日号 128ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。