ソフトバンクがNTT東西の代理店になる---。ソフトバンクBBが2009年2月18日に販売を始めた「Yahoo!BB 光 with フレッツ」は,業界関係者の間に様々な憶測を呼んだ。

 ソフトバンクBBといえば,自前のADSL回線を使った「Yahoo!BB」サービスで販売攻勢をかけ,NTT東西への対抗意識を鮮明にしていたのも記憶に新しい。その同社が一転,NTT東西のフレッツ光シリーズの販売に協力するというのだから,憶測を呼ぶのも無理はない。

 FTTH(fiber to the home)サービスにおいても,同社はこれまで自前の回線設備を使ったサービス提供にこだわっていた。2004年には,未利用の光ファイバ回線(ダークファイバ)を調達して提供する「Yahoo!BB 光」をリリース。2007年には,NTT東西に対してダークファイバの貸し出し方法に変更を迫る(関連記事)など,一貫して自前の光ファイバ網を構築してNTT東西に対抗する態度を取り続けていた。

 ところが今回の「Yahoo!BB 光 with フレッツ」で,ソフトバンクBBは回線事業者であるNTT東西と協業する一般的なインターネット接続事業者(ISP)と変わらない立場となった。Yahoo!BBブランドのインターネット接続サービスを,NTT東西のアクセス回線サービス「フレッツ光シリーズ」とセットにして販売するのだ(関連記事)。

 ソフトバンクBBにとってこの新サービスは,1ユーザーあたりの平均収入(ARPU)が既存のADSLサービスに比べても減ることになる。月額利用料の5000円前後のうち4000円近くは,回線サービス料としてNTT東西に持ち去られるからだ。一方のNTT東西にとっては,ブロードバンドサービスとしてブランドが確立しているYahoo!BBを対応プロバイダのラインアップに加えられる。フレッツ光の純増ペースが鈍っている中で,渡りに船の話だったと言えるだろう。

NTT東西の販売奨励金が狙い?

 だが,これまでの経緯を考えれば,業界の風雲児ソフトバンクが,単純にNTTの軍門に下る道を選んだとは考えにくい。そこで業界では,フレッツ光とのセットサービスに手を出したソフトバンクBBの狙いについて大きく二つの見方が浮上した。

 一つは,フレッツ光の加入者を獲得することでNTT東西がISPに支払っている,販売奨励金を稼ぐことが目当てなのではないか,というもの。もう一つは,いったんはNTT東西に協力することで,光ファイバ市場におけるNTT東西の独占性が高まるのを後押しし,逆に総務省によってNTT東西に対する光ファイバの開放政策が強まることを期待しているのではないか,という見方だ。

 一つ目の販売奨励金狙いという見方については,Yahoo!BB 光 with フレッツの新規ユーザーに対するキャンペーンが根拠の一つとして挙げられる。他のISPに比べて,明らかに内容が貧弱なのだ。

 2009年3月時点ではNECビッグローブやニフティなど大手ISPのほとんどが,フレッツ光対応サービスの新規加入者に対して最大4カ月間,NTT東西のフレッツ光の回線料金も含めて無料とするキャンペーンを展開している。

 これに対してソフトバンクBBの新規加入者向けキャンペーンは,月額1000円前後のISP料金部分を無料にするとしているだけ。フレッツ光の回線料金部分の割引は,NTT東西に別途申し込む必要がある。ISP料金の無料期間も最大で2カ月間と短い。

 一般にこうしたキャンペーンの原資は,ISP自らの営業費に加えて,回線獲得ごとにNTT東西からISPに支払われる販売奨励金が充てられている。このため,大半のISPが似たような無料期間のキャンペーンを設定することになるのだが,ソフトバンクBBはそうなっていない。原資のすべてを,キャンペーンにつぎ込んでいるようには見えないのだ。

 これに対してソフトバンクBBは,「確かに(NTT東西から)いただけるものはいただいている。しかし,それ自体が目当てではない」と否定する。大々的に販売促進キャンペーンを展開していないのは,「自前のADSLサービスから大量にフレッツ光対応サービス移行すると,全体のARPUが下がってしまうから」だというのだ。