電気,ガスなど公益サービスにも広がる可能がある電子申請

 どうも納得がいかなかった筆者は,後日,総務省に聞いてみた。すると,電子申請については,市役所の窓口で教えてもらったもののほかにも各省庁が進めているものがあることが分かった。その中でも,筆者がこれは便利かもしれないと感じたのは,国土交通省が進めている「自動車保有関係手続のワンストップサービス」(OSS)である。

 OSSは,自動車購入時の(1)警察署で行う車庫証明の申請,(2)運輸支局などで行う自動車登録の申請,(3)自動車税事務所で行う自動車税および自動車取得税の申告・納付──の三つをインターネット経由で一括して行えるようにしたものである。2005年12月から新車登録手続きにおけるサービスが始められ,現在,岩手県,群馬県,茨城県,埼玉県,東京都,神奈川県,静岡県,愛知県,大阪府,兵庫県の1都1府8県で稼働している。2008年をメドに段階的に全都道府県に導入される見込みだという。

 新車購入時のこうした手続きは,自動車販売店が代行するケースが多い。その分,代行手数料を支払っているわけで,これを自宅から自分でできるようになれば,コスト・メリットも生まれそうだ。

 また総務省では,現在は行政手続きに限られている電子申請を,電気,水道,ガスといった公益サービスにも広げることを検討しているという。電気やガスは民間企業のサービスだが,これは住基ネットの民間開放を意味するのではない。住民票コードや,氏名,生年月日,性別,住所の基本4情報を民間企業に公開するのではなく,利用者が提示した電子証明書が失効していないかどうかの情報だけを送るのだという。

 いずれ公益サービスにまで電子申請が適用されるようになれば,いろいろと便利なシチュエーションも増えそうだ。

国・政府は住基ネットの利便性を訴えかける努力を

 このようにして今回,住基カードや電子申請のメリットをいろいろと調べてみた。便利そうなものもあったが,正直に言って,住基カードを積極的に取得する動機付けになるほどのメリットは,今のところあまりないと感じた。

 しかも,住基ネットといえば,セキュリティやプライバシー侵害などの問題が残されている。2006年11月30日には,大阪高等裁判所による違憲判決も出された(箕面市は判決が確定したが,守口市と吹田市は最高裁判所に上告中)。住基ネットに不安感を持つ一部住民の心情も理解できる。住基ネットの信頼性確保が改めて問われていることは言うまでもない。

 このような状況では,2006年8月末時点における住基カードの普及率0.86%は,賢明なる住民の「あえて作る必要なし」という声の結果かもしれない。とはいえ住基ネットは,400億円近いコストを投じて構築され,年間で百数十億円の費用をかけて運用されている公共インフラである。その目的の一つは「住民の利便性向上」だ。にもかかわらず,ほとんどの住民が住基カードを取得しても日々の生活に役立つという感覚が持てない現状は大きな問題である。システムの不具合やセキュリティ確保も問題だが,国・政府は,住基ネットの抱える課題をクリアし,住民に利便性を訴えるべく努力することが重要だろう。