自宅から住民票の写しの申請が可能になると言われても…

 こうして住基カードを取得したところで,窓口担当者に実際どんなメリットがあるのかを聞いてみた。取得後に聞くというのも変な話だが,今回は発行手続きを体験するのも目的の一つだったのだから,良しとしてもらいたい。

 担当者によると,メリットの一つは,前述したように公的な身分証明書として使えること(写真付きのみ)。銀行口座の開設や携帯電話,クレジットカードなどの申し込みの際の本人確認に使えるという。もう一つは,転居する際の転入転出手続きが簡素化されること。住基カードを持っている人は,今まで住んでいた市区町村に,事前に転出届を郵送しておけば,転居先の市区町村の窓口でカードを提示するだけで転入手続きができる。これまで,転居前と転居先の両方の市区町村の窓口を訪れる必要があったものが,Webなどで転出届を入手しておけば,転居先の市区町村の窓口に行くだけで済むようになるのだ。

 ここまでは,さしてメリットと感じない。身分証明書といえば,運転免許証を使っている人が多いだろう。筆者もそうである。また,転入転出手続きが簡素化されることは嬉しいが,頻繁に転居を繰り返す「引っ越しマニア」でもない限り,やはり住基カードを取得する積極的な動機にはなりにくそうだ。

 続けて話を聞くと,住基カードは機能を付加することでさらなるメリットがあるという。別に手数料を500円支払って住基カードに電子証明書を格納し,公的個人認証に対応したICカード・リーダーを購入すれば,自宅からインターネットを経由して様々な電子申請が行えるようになるというのだ。ICカード・リーダーは数千円で購入できる。ちなみに冒頭のNTTコミュニケーションズが発表した不具合は,この電子申請に関するものだった。

 窓口担当者によると,電子申請でできることは大きく二つあるという。一つは国税庁が実施している「e-Tax」が利用できること。e-Taxとは,所得税や法人税などの納税手続きをインターネット経由で行うシステムだ。税務署などに行かなくても自宅にいながら手続きができるので,確定申告が必要な個人事業主には便利そうだ。しかし筆者のように,所得税を源泉徴収されている会社員には,ほとんどメリットはない。

 もう一つは,住民票の写しや印鑑登録証明書の交付を自宅から申請することができること。ただし,あくまでも申請である。受け取りは,市役所や市民窓口センターに行かないといけない。筆者が「結局,市役所などに行くということは,そこで申請するのと大して変わらないのでは?」と言うと,窓口担当者は「その通りなんですが…」と歯切れの悪い反応。これも,筆者にはメリットと感じられなかった。

 後で調べてみると,自治体によっては,住基カードを使って,自動交付機による住民票の写しや印鑑登録証明書の交付を可能にしているところもあるようだ。申請書の記入が不要で,しかも自動交付機は休日でも利用できるため,こうした自治体では住基カードのメリットは大きそうだ。ただ,市区町村が独自に発行しているカードで自動交付機が使えるようにしている自治体もあり,必ずしも住基カードのメリットとは言えそうにない。