写真●ガートナー ジャパンの鈴木雅喜ガートナー リサーチ リサーチ ディレクター
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 「ITインフラはこの10年間に猛烈な勢いで進化した。CPU性能は77倍、ストレージ性能は20倍になった。しかし企業の利益は、テクノロジーの進化に応じて増えているだろうか。今ビッグデータに取り組むことは、これまでとこの先のITインフラの進化を、未来で自社のビジネス拡大につなげるための活動にほかならない」---。

 2013年4月25日、ガートナー ジャパンが都内で開催中の「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2013」の基調講演で、ガートナー ジャパンの鈴木雅喜ガートナー リサーチ リサーチ ディレクターはこのように述べた。

 同社が従業員500人以上の日本企業515社を対象に実施した調査によると、ビッグデータの活用に向けて、既に取り組み始めている企業は全体の23.5%、今後取り組む可能性が高いと回答した企業は39.8%だった。「合計6割以上の企業が、将来ビッグデータの活用を考えているとしており、このトレンドに対する期待の高さがうかがえる」(鈴木氏)。

 鈴木氏は、ビッグデータについて、「ビジネスインテリジェンスやSNS、センターデータなどに限定した話だという誤解があるが、経営とIT全体に関わるメガトレンドである。対象となるデータは幅広く、特定の使い方に閉じたものではない」と強調した。

 例えば、早くからビッグデータの活用に取り組んでいる大阪ガスのビジネスアナリシスセンターでは、社内でデータ分析の対象としなかった部門は、総務部と秘書室だけだったという。同センターでは、販売量予測分析、営業支援分析、設備の故障診断、緊急車両の最適配置など年間100件以上のビッグデータ分析プロジェクトを実施して、成果を上げているという。

 大阪ガスにおけるビッグデータ活用の成功要因は、「経験値の高いデータサイエンティストの存在」だと鈴木氏は指摘する。大阪ガスは、ガスの需要予測を行う目的で、約15年前にデータ分析を開始した。当初は技術研究所に配置されていたデータ分析チームを、2006年に情報通信部に移す。以来、情報通信部では、データ分析に関する社員教育を続けてきた。「ビッグデータを分析するデータサイエンティストに必要なのは、数学力・分析力ではなく、データ活用のニーズを発掘する“経験と勘”。ビッグデータへの取り組みを成功させるためには、経験豊かなデータサイエンティストを探すのが近道だ」(鈴木氏)。

データサイエンティストをどう確保するのか、今から検討を

 重ねて、鈴木氏は、データサイエンティストを確保することの重要性を説いた。「2016年までに、ビッグデータプロジェクトに取り組む日本の大企業の数は倍増し、その7割にIT部門以外の経営・事業部門が参画する」と鈴木氏は予想する。

 ここで課題となるのは、ビッグデータを扱う人材の確保だ。ビッグデータサイエンティストには、統計解析などの数学的スキルだけでなく、データ分析の実務経験、さらには現場を理解して業務部門の管理層とコミュニケーションを取る能力も必要とされる。

 「2015年までに、ビッグデータ関連で440万人の雇用が創出されるが、実際に採用できるのは3分の1にとどまると予想される。データサイエンティストの採用をどうするのか。自社で育成していけるのか。今から検討を始めなければならない」と、鈴木氏は注意をうながした。