ITスキル研究フォーラム(iSRF)は2011年11月29日、人材の育成や調達をテーマに、第16回セミナー「先進企業から学ぶ海外事業と人材戦略」を、東京秋葉原で開催。2011年に発足した調査研究、研修評価情報、調達活用の三つのワーキンググループが、それぞれの成果を中間報告した。アンケート調査を通じて、人材流動や環境変化を苦手とするITエンジニアの性質や、人月単価などが明らかになった。

 最初に調査研究ワーキンググループが活動を報告した。調査研究ワーキンググループの活動は、ITエンジニアのキャリアの自律性と仕事観を、アンケート調査によって明らかにすることである。一般的な産業に就く人との比較ができるよう、「人口オーナス2.0調査(2011年1月21日~23日、法政大学大学院政策創造研究科、小峰・諏訪共同研究)」の一部と同様の設問50問を作成。キャリア自律(1~23問)と仕事観(24~50問)で実施した。

写真1●調査研究ワーキンググループ主査で、日立ソリューションズで人財開発部長を務める石川拓夫氏
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 中間報告をした調査研究ワーキンググループ主査で、日立ソリューションズで人財開発部長を務める石川拓夫氏(写真1)は、アンケート実施前に二つの大きな事前仮説を立てた。一つの仮説は、ITエンジニアはキャリアを自律的に構築する意識が弱いのではないか、というもの。もう一つの仮説は、ITエンジニアは根本的に変化に弱い体質を持っている、というものだ。

 キャリア自律の弱さの背景には、ITを取り巻く急激な環境変化がある。このことが、将来を見据えた成長の意欲を減退させる。石川氏は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公開した2011年の統計白書のデータから、ITエンジニアの40%が将来に不安を抱いていることを示した。一方、環境変化への弱さの背景として石川氏は、ITエンジニアの保守性の強さを指摘する。

存在意義は専門性だが雇用市場では自信なし

 アンケート結果から見える、ITエンジニアと一般産業人の比較は、興味深いものだ。キャリア自律では、ITエンジニアは、新しい知識の習得意欲や勉強意欲、自己投資などで優れている。前向きな姿勢がうかがえる。仕事の質を向上させることにも熱心だ。にも関わらず、プラス志向で行動しているという設問に対しては、一般産業人よりも低い値をとる。また、人脈やネットワーク作りも、一般よりも低い。

 仕事観では、さらに顕著な傾向が出る。専門領域について非常に強い思い入れを持っている一方、一目置かれる専門性を持っているかどうかについては、一般の産業人よりも値が低い。リストラの対象になるかどうか、今の組織で昇進できるかどうか、独立して成功するかどうか、といった設問でも、やはり一般よりも自己評価が低い。

 人材流動市場において己の存在価値に確かな自信が持てない一方、組織の一員としての振る舞いは、一般産業人よりも強い。例えば、将来のために様々な部門での経験が役立つという設問に関しては、一般産業人を大きく引き離して肯定している。また、専門領域を作りたいという思いが強いにも関わらず、将来的には経営職に強い関心を示しているほか、マネジメント職に移っても(反対にマネジメント職から専門職に移っても)うまくやっていける自信を持っている。

 調査から見えてきたITエンジニアの姿として石川氏は、「一般社会人と比べて前向きかつ意欲的で、新しい知識やスキルを習得する姿勢がある。一方、自己の存在理由を専門性に置いているが、専門性を組織の中だけで判断しており、人脈形成に弱く、雇用市場で通用する自信がない。思考が内向きであり、環境変化に弱い」と分析した。

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