写真1●米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEO
[画像のクリックで拡大表示]

 「日本には5月に来たばかりだったが、『偽物のクラウド』への注意を促すために戻ってきた」---。

 米セールスフォース・ドットコムの会長兼CEO(最高経営責任者)であるマーク・ベニオフ氏(写真1)は2010年10月5日、東京都内で開催した同社のイベント「Cloudforce 2010 Japan」で基調講演を行い、他のハードウエア/ソフトウエアメーカーの動きをこうけん制した。

 ベニオフ氏の基調講演では、「クラウド」と銘打って販売されるハードウエアやソフトウエア製品のことを「偽物のクラウド」と批判することが、最近では恒例になっている。今回の基調講演でも、「5月に日本を訪問した際に、たくさんの顧客を訪問した。その中には嬉しそうに『当社にもクラウドがあるんですよ』と言って、メーカーから購入した『クラウド』を私に見せてくれた顧客がいたが、実際にはラックとサーバーがあるだけだった。購入しなければならない“モノ”は、クラウドではない」と聴衆に訴えかけた。

写真2●ベニオフ氏が示した「偽物のクラウド」のスライド
[画像のクリックで拡大表示]

 ベニオフ氏は、クラウドの特徴をこう説明する。「クラウドでは、大企業も中小企業も同じサービスを利用する。大金を払わなければ使えないというものではない。クラウドは、ソフトウエアを民主化するものだ」。

 さらに米オラクルのラリー・エリソンCEOが「クラウド」と表現する同社のハードウエア製品の写真を引き合いに出しながら、「効率的ではないもの、ソフトウエアを民主化しないもの、コストが高いものは、クラウドではない」と断言した(写真2)。

2011年内に東京データセンターを開設

写真3●米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEO(左)と、NTTコミュニケーションズの海野忍副社長
[画像のクリックで拡大表示]

 ベニオフ氏の「偽物のクラウド」批判は、基調講演後の記者会見でも続いた。セールスフォースとNTTコミュニケーションズは同日、NTTコミュニケーションズのデータセンターを使って、セールスフォースの東京データセンターを2011年中に開設することを発表した。これもベニオフ氏に言わせると、「5月の来日時に『偽物のクラウド』がまん延していることにショックを受けたからだ」という(写真3)。

 「NTTの電話回線や、電力会社の電力サービスのように、クラウドはユーティリティとして利用できなければならない。そういうユーティリティを提供できるのが、ネットワークにも十分投資しているNTTコミュニケーションズのデータセンターだ。顧客に『発電所を作って下さい』というのは、偽物のクラウド。日本の顧客は、だまされてはいけない」(ベニオフ氏)。

 もっとも、セールスフォースが日本にデータセンターを開設する意向を発表したのは2007年のこと。今回ようやく、2011年に東京にデータセンターを設けると発表した。時間がかかった理由についてベニオフ氏は、「データセンターを新設するに当たって、アジアのほかの候補地も比較しながら様々な調査を行った。そうした調査から、NTTコミュニケーションズが最も信頼できると判断した。この評価に時間がかかった。日本では特に、政府向け、大企業向けのサービスが伸びており、日本ローカルのデータセンターが必要だと判断した」と説明する。

 セールスフォースのデータセンターを受け入れることになった、NTTコミュニケーションズの海野忍副社長は「セールスフォースが求める仕様は、非常に厳しかった。特に、セキュリティの要求を満たすのが、一番大変だった」と語る。同社は日本国外でもデータセンターを運用しており、香港には最大消費電力量が20Mワットを超える巨大施設も抱える。海野副社長は「当社の海外データセンターも検討してもらえるよう、セールスフォースに売り込んでいく」とコメントした。