米アドビシステムズが2009年10月5~7日のカンファレンス「Adobe MAX 2009」に合わせて発表したAdobe Flash Player 10.1は,同社が2008年5月に立ち上げた業界団体「Open Screen Project(OSP)」の最初の成果となるランタイム・ソフトだ。本発表でアドビが正式に対応を表明した携帯プラットフォームは,Windows Mobile,Palm webOS。デスクトップではWindows,Mac OS,Linux。そして現時点ではパブリックベータ版ながらAndroidとSymbian OSと,合計7つに及ぶ。また,10月5日にはGoogleとRIMがOSPに加入したことが明らかになった。Googleが開発している製品やBlackberry端末でもFlashコンテンツが利用できるようになると見られる。

 さらにアドビは10月5日に,次期Flash ProfessionalでiPhoneアプリが開発できると発表している。ランタイムには対応しない(現在アップルはOSPに未加入)とはいえ,Flashコンテンツの実行環境にiPhoneが加わったという見方もできる。Action Scriptがオブジェクト指向言語のバージョン3となって以降,Flashをアプリケーションの開発に利用する動きは広がった。今後スマートフォンやネットPCを対象としてFlashアプリケーションを作る事例が増えそうだ。

 その一方で,すでに市場にはHTML5とJavaScriptという“標準的な手段”も存在する。10月5日の記者会見において最高技術責任者のケビン・リンチ氏は「HTML5を脅威と感じるか」という質問に対し,「脅威ではない」と明言。Flashの機能や普及度,表現力や制作ツールの充実など,現在のHTML5に欠けている部分でFlashに大きな優位性があると強調した。

効果測定においてGoogleとは異なる立場

写真1●ケビン・リンチ氏の記者会見
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 Flash PlayerやAdobe Readerといった,アドビが「ユビキタスプラットフォーム」と位置づけるランタイムは,2009年11月にも買収完了を目指すオムニチュアの効果測定技術と親和性が高い。Flash製のコンテンツをユーザーがいつ,どのように利用したのかといった,コンテンツの効果を測る手段を買収によって補完する狙いだ。

 こうした計画はGoogleが提供しているサービスと重なる部分が大きい。すでに一定の評価があるGoogleアナリティクスや,事実上Googleが牽引しているHTML5,Androidアプリケーションなど,今のところつながりのないこれらの動きに何らかの協調が生まれた場合,アドビの脅威となるだろう。

 10月6日の記者会見でGoogleとのビジネスの相違点と,アドビの優位性をケビン・リンチ氏に質問したところ,同氏は「Googleのサービスはクラウド上に情報を蓄積し,管理することを前提としたサービスだ。このような状態は顧客によりけりで,一概に望ましいとは言えないのではないか」と答えた(写真1)。

 例えばエンタープライズの案件では,誰がコンテンツを利用したのか,という個人の特定に及ぶ情報を,解析サービスの提供者側に渡してたくないはずだという。また,Googleアナリティクスは情報を解析してビジュアライズするだけだが,アドビの技術はニーズに応じて効果測定法をカスタマイズできる点などを強調。アドビはコンテンツそのものの効果で顧客の収益を上げることをビジネスとしているとして,広告モデルで収益を得るGoogleとは異なると説明した。

若手が牽引するFlash開発

写真2●左がSpark Project代表の新藤愛大氏。右がSaqooshaの小山智彦氏。手作りの熊のかぶり物は撮影希望者が殺到していた。両氏は全編英語でプレゼンをした
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 Flashを実行できる機器と効果測定技術が充実したあとは,開発者が形成するコミュニティの充実が大きな課題となるだろう。この点ではすでに若い技術者が先導して,さまざまな活動が実現されている。

 FlashおよびAction Script開発のオープンソースコミュニティSpark projectは,画像処理,3D,サウンドエフェクトなど,Flashアプリを構築するうえで必要なコードを,プロジェクト単位で開発し,公開している。各コードはそれぞれライセンスの規定はあるが,基本的に誰もが参加して利用することが可能だ。

 本コミュニティの代表者はBeInterractive!の新藤愛大氏(写真2)。21歳ながらフリーランスでアプリケーションを開発しつつ,コミュニティのとりまとめを行っている。また,同コミュニティのコミッターであり,Action ScriptでARを実現するFLARToolKitの開発者,Saqooshaとして活躍している小山智彦氏も大きな影響力を持つ。新藤氏と小山氏はAdobe MAX 2009の中で「Introduction to The Spark Project and FLARToolKit」と題するセッションを担当し,その技術力で大いに会場を湧かせていた。

 同じくMAX会場に設置されたFITC Unconferenceブースでは,カヤックの大塚雅和氏が日本での取り組みとしてwonderfl build Flash online(wonderfl)を紹介(写真3)。wonderflは大塚氏が開発した,ブラウザ上でAction Scriptのコードを書いて実行できるWebサービスだ。他のユーザーの投稿したコードをフォークして編集する機能を搭載し,開発者同士がコラボレーションしながらコードを洗練させる使い方ができる。開発者同士,コミュニケーションしながら問題を解決してゆく手段として,また,Action Scriptを学びたいユーザーにもうれしいサービスだ。会場では,ゲーム・コンテンツをフォークしながら開発する流れなどを説明。多くのFlash開発者が熱心にデモを見ていた。スマートフォンや様々な機器(写真4)にFlash活用の場が広がることによって,こうした取り組みの重要性は今後増すだろう。

写真3●カヤックの大塚雅和氏。こちらも流暢な英語でwonderflを紹介
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写真4●VIZIOのHDTVと,Intel家電用CPU「Intel CE」搭載セットトップボックスでAIRアプリを動作させた展示
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