米アドビシステムズは2009年10月5~7日にロサンゼルスで開催中のプライベート・カンファレンス「Adobe MAX 2009」の2日目の基調講演で,同社のツール/サービスのカスタマの事例を数多く紹介。各種コンテンツ制作技術(ツール)とコンテンツが生む効果の測定(サービス)をシームレスにつなげることによって,ビジネスの質が向上すると訴えた。コンテンツ市場における同社の影響力をより強めようというアドビの決意が感じられる内容だ。

ビデオ配信サービス用ライブラリを充実

写真1●MLB.comの映像配信サービスを支えるアーキテクチャの解説。Flash Player 10.1の新機能であるHTTPストリームを活用している
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写真2●Open Source Media Frameworkを使って動画にさまざまな要素を追加するデモ。画面の上に表示しているのがライブラリのコード
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 最初に,野球中継をコンテンツにして事業展開する米MLB.comのProduct Development,デビッド・ユウ氏が登壇。アドビのFlash Content Creation and Distributionディレクターのジェニファー・テイラー氏とともに,スケーラブルな動画配信アーキテクチャを紹介しながら,Twitterとリアルタイムストリーミングの連携や,スムーズな巻き戻し機能といったビデオ配信サービスのトレンドを説明した(写真1)。

 映像配信でネックとなるのはキャプションの追加やプログレッシブダウンロードなど配信に不可欠な機能を,ゼロから作り込まなければならないことだ。テイラー氏はこうした問題の解決策として「Open Source Media Framework」を紹介した(写真2)。同Frameworkは,ビデオ配信サービスで必要になる個々の機能を,ActionScriptのライブラリとして提供するもの。コンテンツ・ホルダーは必要な機能を簡単にサービスに取り込んで利用できる。今後は,ビデオの視聴時間や時間帯など,コンテンツビジネスは欠かせない解析データを収集可能にすることを目指す。

インタフェース・デザインが情報活用を促進する

写真3●FedExの情報ダッシュボード。地図上に搬送作業中の車の数などを重ねて表示する
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 続いて,米FedExのStrategic Technologistアダム・モレンコフ氏が登場。高価な商品を搬送する場合の特別な顧客サポートに活用する情報ダッシュボードを紹介した(写真3)。RIA開発ツールFlexで開発したアプリケーション用のミドルウエア「Adobe Livecycle Data Services」の活用事例だ。

 FedExの情報ダッシュボードは,エリアごとの運送状況を表示する地図,特定の車が走行している場所の気温,目的地までの到達時間など,さまざまな状況をビジュアル化して表示する。ビジュアライズすることによって情報が分析しやすく,必要な行動がとりやすくなるという。アドビのプラットフォームエバンジェリストであるベン・フォルタ氏は「すべてのエンタープライズ・システムはこのようなデザインになっているべきだ」とクリティカルなビジネスにおけるインタフェース・デザインの重要性を述べた。

AIRアプリのマーケットプレイスも運用

 カンファレンス期間中に出荷が始まったAdobe ColdFusion 9のデモンストレーションやAdobe Flashによるゲーム開発事例の紹介に続いて,アドビのシニアプラットフォームエバンジェリストのセルジュ・ジェスパー氏が登壇。Adobe Flash Player 10から搭載したRTMFP(Real-Time Media Flow Protocol)ベースのサービス「Stratus」を使った対戦ゲームを紹介した。StratusはFlash Player同士をP2Pで通信させる技術で,現在はベータ版を入手できる。

 さらに「Distribution Manager」を使って,開発したゲームをウィジェットとしてFacebookやMySpaceといったSNSで公開する手続きを説明した。Distribution Managerは70のSNSに対応しており,ウィジェットの公開からウィジェットのトラフィックを確認して分析する機能などが付いている。

 併せて,開発したAIRアプリケーションを,アドビが運営するアプリケーション・マーケットのAdobe AIR Marketplace上で公開する手続きについて解説した。アプリケーションの登録は,アドビがホスティングしているアプリケーションに対する,同社の課金サービス「Shibuya」(現在はベータ版)を通して行う。Adobe AIR Marketplaceは,今のところインビテーションを出した開発者限定でアプリケーションを登録できる。課金運用の開始時期は未定で,現時点での対象市場はカナダと米国のみとなっている。

FlashでARを実現する

写真4●USPSのVirtual Box Simulator。送りたいものが箱に入るかどうかをチェックできる
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 最後にアドビの最高技術責任者のケビン・リンチ氏が登場して,Flashによる拡張現実(AR)コンテンツなどを紹介した。United States Postal Service(USPS,アメリカ合衆国郵便公社)の「Virtual Box Simulator」は,PCのカメラで撮影したフラットな空間に送りたい物を入れる架空の箱を表示させ,それが箱に入る大きさかどうかを確認するFlashコンテンツ(写真4)。ActionScript3で3D空間を作るクラスライブラリPapervison3と,FlashでARを実現する「FLARToolkit」を活用した事例だ。

 FLARToolkitはARToolKitをActionScript 3に移植したもので,日本人クリエイターのSaqoosha氏が開発した。講演では,メッセージカードをカメラで撮影すると,そこからミュージシャンのジョン・メイヤーが浮かび上がり歌いだすコンテンツを紹介。その後,本人がステージ上に現れて参加者を驚かせた。