写真●危機管理/広報コンサルタントで日本広報協会広報アドバイザーの平能哲也氏
写真●危機管理/広報コンサルタントで日本広報協会広報アドバイザーの平能哲也氏
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 「『正直に言うと』『多分』『ちょっと』。社長の悪気のない口癖が企業を危険な立場に追いやることがある」――。企業における危機マネジメントの総合展「エンタープライズ・リスク・マネジメント2008」で8月21日、危機管理/広報コンサルタントで日本広報協会広報アドバイザーの平能哲也氏が「間違いだらけのクライシス・コミュニケーション」と題した講演を行った(写真)。

 クライシス・コミュニケーションとは、企業が不祥事や事故を起こした場合の広報活動。顧客や一般消費者、地域住民、マスコミなどに適切な対応を取ることで、被害を最小限に食い止める。「企業で不祥事が発生した際、顧客や消費者、マスコミから『どう見られるか』が問われる。対応を誤ると不祥事の被害を広げてしまう」(平能氏)。

 講演では、クライシス・コミュニケーションの失敗を五つに類型化。(1)第一報の軽視、(2)不適切な対応、(3)公表の遅れ、(4)情報の隠ぺいや嘘、(5)経営トップの失言、といった対応が、社会的な批判や長期的なネガティブ報道に結びつくという。こうした失敗をしないように取り組む企業もあるが「理想論で現実とのかい離が大きい場合が多い」という。現実的な対応として、「大事なのは顧客やマスコミ、従業員などのステークホルダーを怒らせないこと。一度感情的になってしまうと修復は非常に困難になる。相手が納得できるレベルの“合格点”を目指すべき」と勧める。

「私は寝ていないんだ」失言は寝させないスタッフも悪い

 まず、社内向けのクライシス・コミュニケーションとして「外部に発表する前に従業員への情報発信をすべき」という。従業員への情報伝達が遅れると、営業担当者が顧客から不祥事について聞かされるといったケースが発生する。現場に恥をかかせる形になり、従業員は会社に対して不信感を募らせる。こうした事態を招かないためには「危機発生を想定して、従業員にいつまでにどこまでの情報を伝達するか決めておくべき」という。

 マスコミ対応では経営トップの取る行動などを決めておくべきという。例えば、記者会見に出席する人選。「危機の種類は様々ある。社長が出るべきかどうかの基準を事前に作っておかないと迷うことになる」。また、経営トップの体調管理も重要だという。「ずいぶん前に「私は寝ていないんだ」と言って世間から叩かれた社長がいた。私が思うに、社長が寝られない状況にするスタッフも悪い。社長はスーパーマンではない。一睡もせずに記者会見に出ると、記者の厳しい質問にキレて失言してしまう」。

 このほか、経営トップの何気ない口癖が問題となる場合もある。「例えば『正直に言うと』などを口癖で言うと、『さっき言っていたことは正直じゃないのか』という話になる。『多分』や『ちょっと』も被害を過小評価している印象を与えて危険だ。会見のトレーニングなどでクリアしていく必要がある」。

 顧客や消費者、地域住民への対応では自社のホームページの活用が重要という。「電話対応やお詫び広告などもあるが、ホームページの活用が最もスピーディで効果的」と評価する。ただ、効果的な分だけ対応を誤ると周囲に悪い印象を与えがちだ。例えば、テレビやニュースサイトで不祥事や事故が報道されているのに、企業のホームページ上に情報がないという状況は危ない。「『危機に対する意識が甘い』『反省していない』と受け取られるリスクがある」からだ。

 そこで「簡単でもよいので、危機発生時にはホームページ上に一報を掲載すべき」と勧める。その際、トップページのデザインも変更した方が良いという。「企業サイトのトップページは笑顔の写真などが多くあるが、不謹慎な印象を与えるおそれがある」からだ。

 これらの対応準備として、文書によるマニュアル化が必要という。「危機発生時には予測不可能な悪い展開が短時間に、同時に発生する。そうなると人間はパニック状態になる。本来の能力を出し切れないことを想定して、何をすべきか具体的にマニュアル化しておくべき」とした。