米Microsoftが欧州連合(EU)の独占禁止法(独禁法)担当委員との法廷闘争で圧倒的に敗北してから3年以上経過し,今回の控訴審では全面的に敗訴した。ルクセンブルクにあるEU第一審裁判所は9月17日午前,長い間待たれていたMicrosoftの控訴に対する判決を下した。判決はEUが初審で言い渡した条件をほぼすべて支持し,6億ドルという記録的な制裁金の支払いをMicrosoftに命じた(関連記事:MSの競争法違反問題,欧州司法裁判所がECの是正命令を支持)。

 第一審裁判所は「Microsoftが欧州市場で『支配的な地位を乱用した』」とした初審の判決について,有意な項目すべてを認めた。同裁判所は,MicrosoftによるWindowsへのWindows Media Player搭載が違法だったことと,Windows Media Player非搭載版Windowsの販売を命じた欧州委員会(EC)の判断が正しかったことも確認した。さらに「Microsoftは,自社製ワークグループ・サーバー製品の相互接続性に関する情報をパートナやライバル企業へ提供することを不正に拒絶し,ECの是正命令に対して的外れな不服申し立てを行った」と判断した。ライバル企業はMicrosoftからの情報を使っても,Microsoftの主張と違ってクローン製品を作ることができなかったのだ。

 そのうえ第一審裁判所は,「Microsoftの独禁法違反行為に関する重大性および期間の評価と,制裁金の金額設定について,ECの判断は誤っていなかった」として,ECがMicrosoftに科した制裁金も支持した。Microsoftが勝ったのは,この係争で技術面を監督するためにECの任命した外部監査委員が作業に過大な時間をかけ,Microsoftの機密情報にアクセスしていたことを認めさせた1点だけにとどまった(関連記事:欧州委員会,米Microsoftの制裁措置履行を監視する技術アドバイザを任命)。同裁判所は実質的に,今後Microsoftが監査委員にかかわる経費を負わなくてよいと判断したことになる。

 判決がルクセンブルクで9月17日の早い時間――Microsoft本社のあるワシントン州レドモンドでは真夜中直後――に出たことから,いまだにMicrosoftは動揺したままで,適切な対応を決めようとしている段階にある。現地で判決を待っていたMicrosoft顧問弁護士のBrad Smith氏は「欧州の法律に基づく責務を果たす企業である当社にとって,この判決は明らかに極めて重要だ」と述べた。「われわれはこの判決を精査し,判決に従うために必要な追加措置があれば対応していく」(Smith氏)。

 Smith氏によると,MicrosoftはEUの独禁法違反判決に従うための行動を2004年からとってきたものの,この判決における重要なポイントとなったある条件を完全には満足できていないという。EUはMicrosoftに対し,サーバーの相互接続性に関する技術文書をライバル企業へ提供し,ライセンス契約するかどうか判断させるよう要求していたのだ。Microsoftは,判決に従って「Windows Media Player」非搭載版「Windows XP」および「Windows Vista」を出荷したが,売れ行きは悲惨な状況だった(関連記事:米MicrosoftとEU,独禁法違反裁判で「Windows XP N」について異なる見解)。なおSmith氏は「Windows Vistaは2004年に下された独禁法違反判決への対応を終えた」とした。

 最初にMicrosoftを提訴し,初審の判決を守らせようと奮闘してきたECの独禁法担当委員らは,判決での自分たちに対する評価を素直に喜んだ。EC委員長のJose Manuel Barroso氏は「この判決はECの競争政策における客観性と信頼性を認めたものだ」とコメントした。今回の係争でECを支持していた反Microsoft系業界団体であるEuropean Committee for Interoperable Systems(ECIS)の弁護士であるThomas Vinje氏は「この政策は欧州の消費者の利益を守り,企業間の公正な競争を保証する。欧州の企業と消費者にとって,(判決の出た)9月17日は大きな意味のある日となった」と述べ,ECに同調した。

 今のところMicrosoftは「次の対応を決めるため,判決内容を詳しく検討するのに時間が必要」としている。ほぼ間違いなくMicrosoftは,欧州の最高裁判所である欧州裁判所に対する上告という最後の権利を活用するだろう。

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