米Appleは6月29日の午後6時(太平洋夏時間)ちょうど,米国各地の直営店と米AT&Tの一部店舗で待望のスマートフォン「iPhone」の販売を開始した(関連記事「【現地速報】ついに発売された「iPhone」,18カ月で1000万台の売上げ見込む」)。これにより,消費者はAppleの考えるモバイル環境の未来像を初めて垣間見た。

 多くの徹夜組も含め,iPhone発売を待つ列に並んだApple信者にとっては,待つこと自体に価値があった。というのも,Appleが何カ月も前から表明していた技術的な約束が,iPhoneによって果たされるからだ。ただし見識あるユーザーからみると,iPhoneはバグだらけで,特徴に欠け,機能面で奇妙な不足がある。つまり,Appleの伝統に則った製品であり,夢中になる人と呆れる人が同時に現れる。

 マーケティングの点からみると,iPhoneは文句なしの大成功だ。AppleのCEOであるSteve Jobs氏は,「Macintosh」が主役の展示会MacworldでMacintoshに言及することを避け,代わりに秘密の新製品iPhoneを中心に据えるという一風変わった決断を下したところ,それ以来iPhoneに対する期待と興奮が高まっていた(関連記事「「電話を再発明する」---Jobs氏がMac OS X搭載の携帯電話機を発表」)。Appleは少しずつ情報統制を緩和し,貪欲な大衆に対して詳細を小出しにすることで,iPhone発表から発売までの6カ月間をうまく演出した。

 こうして6月29日の発売時には,興奮が熱狂にまで高まった。Appleファンたちは店の外に並び――なかには何日も前から待っていた人もいる――,キラキラ輝く小さな金属製の物体を初めて手にするため,数百ドル払った。iPhone発売前の興奮度は,「Microsoft Xbox 360」「Sony PlayStation 3」「Nintendo Wii」などの家電品や,首を長くして待った「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」などの映画に匹敵した。

 ところがiPhoneを入手して帰宅すると,現実が頭をもたげる。Appleが独特な登録システムを採用しているので,消費者はWindowsパソコンやMacintoshにインストールしたメディア・プレーヤー・ソフトウエア「iTunes」でiPhoneをアクティベーションする必要があり,買ったその場では使えない。購入したら急いで家に帰り,パソコンに接続し,自分でアクティベーションすることになる。残念なことに,筆者も含め多くのiPhone購入者は,サーバーの過負荷の影響で,AT&Tによるアクティベーション・コード発行を待たなければならないことに気づいた。アクティベーション・コードが届くまでのあいだ,500~600ドルもする役立たずの板きれを眺める羽目になった人は多かった。

 ユーザーはがっかりさせられたが,iPhoneそのものは宣伝に違わぬ素晴らしいものだ。iPhoneに搭載された技術は,特色あるズーム機能を備えたクールなタッチ・スクリーンから,画面の回転機能まで,すべてではないものの大抵が宣伝通りうまく機能する。バッテリ駆動時間はこの種のデバイスにしては驚くほど優れており,バッテリを多く消費するWebブラウジングやビデオ再生という処理でも長い。

 しかし機能には,様々なバグがある。内蔵アプリケーションはおおむね優れているが,不思議な組み合わせで,新しいアプリケーションは一つもダウンロードできない。一部機能は出来かけか,完全に抜け落ちている。例えば,iPhoneにはボイスメールを一覧表示する素晴らしい「ビジュアル・ボイスメール」機能があるのに,マルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)のような携帯電話機で当たり前の機能を持っていない。iPhoneのWebブラウザは,モバイル・デバイス用としては今まで最高だ。もっともAppleが自社の「Safari」を採用したことから,多くのWebサイトで最適な表示ができなかったり,互換性の問題が発生したりする。こうしたトラブルは,特にスマートフォン用にデザインされたWebサイトでよく起きる。どうも,称賛された機能ごとに必ず断り書きがあるように思える。

 結論として,iPhoneはAppleの主張した通り革新的である。ただ,改良の余地が多くある典型的な“バージョン1.0”製品だ。筆者は,これからも魅力的なデバイスに対するAppleの進展を追いかけ,7月の終わりごろレビューする。それまでは,SuperSite for Windowsに掲載した筆者の第一印象とフォト・ギャラリー,スクリーンショット,各種記事を読んでいただきたい(「Apple iPhone First Impressions」)。

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