「米Microsoftに米Yahoo!買収の可能性」とのうわさが5月初めに流れたことに対し,MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は「ある大きな買収を検討している」と認めた。ほとんどの人々は,Ballmer氏がMicrosoftとYahoo!間の断続的な交渉について言及したと考えた。ところが今になって,米aQuantiveについての発言だったと判明した。Microsoftは5月18日(米国時間),60億ドルもかけてオンライン広告企業のaQuantiveを買収すると発表したのだ。この買収は,Microsoftにとって過去最大の規模となる。

 Microsoftは買収計画を発表したプレスリリースに,「当社は以前から,世界規模のインターネット全体に及ぶ広告プラットフォームと,広告にかかわる投資回収率の最大化に役立つ一連のツールとサービスを広告業界に提供するという戦略の概要を明らかにしていた。aQuantiveの買収によって,この戦略を拡大できる」と記した。ただし,aQuantiveを資産価値以上の金額で買収することと,買収が絶望の結果であることは触れなかった。

 見ての通りMicrosoftは,インターネット検索大手の米Googleに押され気味で,急速に存在が小さくなってきている。さらにMicrosoftは,オンライン広告企業の米DoubleClick買収し損なったので(DoubleClickは,Googleが比較的安い31億ドルで4月半ばに買収してしまった),「代替策」としてオンライン広告市場で売れ残っている企業から買収先を選び出す必要があると悟った。その「代替策」がaQuantiveである。かつて企業買収で失敗した際と同様に(例えば米VMware),MicrosoftはaQuantive買収から最大限の成果を獲得しなければならなくなった。しかし実際には,優れたソリューションが手に入るチャンスを今回も逃してしまったとしか言いようがない。しかも今回は,そのソリューションをますます強大になりつつあるオンライン業界のライバルGoogleに奪われたのだ。

 MicrosoftはaQuantive買収でどの程度払い過ぎたのだろう。5月第3週におけるaQuantiveの株価は30ドル中盤で,60億ドルという買収金額は1株当たり66ドル強であるから,実勢価格のほぼ2倍で買収したことになる。aQuantiveの株主が突然の幸運に恵まれるのに対し,Microsoftは買収によって強さよりも弱さを目立たせることになった。Microsoftによる過去最高額となる買収の対象が,無名企業であることがその証拠だ。

 Microsoftによると,aQuantiveのオンライン広告に関するノウハウを活用し,「Windows Live」「MSN」「Office Live」「Xbox Live」といった様々な既存サービスの増収につなげるという。もっとも,60億ドルという買収価格に見合う増収を得るには,並みの活用では不十分だ。きっと,aQuantive買収はMicrosoftの「GoogleによるDoubleClick買収は非競争的」という主張の立証に役立つことになるだろう(関連記事:Microsoft,GoogleによるDoubleClick買収の阻止を米国政府に要求)。Microsoftは,かつてないほど強力になったGoogleを本気で恐れている。そうでなければ,aQuantive買収にここまでの金額を出さないはずだ。

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