「Windows Vista」が,1月29日の一般消費者向け販売開始から100日という最初の節目を迎える。そこで,成功した製品かどうかの分析を始めてみよう。米Microsoftは3月,「Windows Vistaは発売後30日間にライセンス2000万本以上を販売し,『Windows XP』の2倍のペースで売れた」と発表した(関連記事:Windows Vista、発売後1カ月で2000万本を売り上げ)。4月には,「Windows Vistaの販売は予想を上回る状況となり,四半期の売上高で144億ドルという新記録を達成した」としている(関連記事:Microsoftの1~3月期決算,VistaとOffice好調で大幅増収増益)。

 その一方で,いまだにWindows Vistaは,物議をかもしているようだ。技術面で知名度の高いブロガーのなかには,Windows Vistaの問題を指摘したうえで「Windows XPに戻す」と書く人や,「Macintoshにスイッチする」と書く人までいる。インターネットは,Windows Vistaのハードウエア/ソフトウエア非互換に関する恐ろしい話があふれ,「Windows 2000」以後の失敗リリースとなった「Windows Me」にちなんで「Windows Vistaを『Windows Me 2』という名前に変えたらどうだ」という意見もある。何人かのブロガーは,「Microsoftが主張するほどWindows Vistaは売れていない」という疑いを実証する目的で,Microsoftの売り上げの分析を試みた。

 本当はどうなのだろうか。もうすぐ発売100日に到達するので,Microsoftは様々な疑問に回答するだろう。5月第3週に開催されるWindows Hardware Engineering Conference(WinHEC)の場で,詳しい情報も手に入るはずだ。しかし今の時点では,Microsoftやその他情報源から得た数字や統計を調べれば,Windows Vistaの成功に関する2つの側面についてはヒントが得られる。

 まず,Windows Vistaの販売状況を調べよう。パソコン・メーカーが2006年に全世界で販売したパソコンは約2億3000万台で,アナリストは2007年の販売台数を前年比8~11%増と予測している。これまでに販売されたパソコンと,これから販売されるパソコンのほとんどにWindows Vistaがインストールされるとすると,Windows Vistaの数は相当多くなるだろう(Microsoftは,「2007年末までに,Windows Vista搭載パソコンは1億台になる」と控え目に予測している)。ただしMicrosoftの事業では,企業向け販売が最も多い。Microsoftによると,企業に対するWindows Vistaの販売は,あらゆるうわさと異なり,これまでの最高記録だったWindows 2000の2倍弱あるという。

 もしかしたら「Windows 2000の2倍」を上回るかもしれない。企業の全パソコンにおける2007年末時点のWindows Vistaインストール率を,米Gartnerは4.2%,米IDCは5%と見積もった。これに対してWindows 2000のインストール率は,発売された年の末時点で2.6%だった。このインストール率の分母が,企業向けパソコン市場全体であることに注意しよう。市場はWindows 2000発売当時よりも拡大しているので,Windows Vistaの販売数量はWindows 2000の2倍を上回る可能性があるのだ。また“InformationWeek”Researchが612社を対象に調査したところ,「25%がWindows Vistaの導入を進めており,さらに17%は2007年末までに導入を始める」という結果になった。「この割合は,これまでのWindowsに比べてもはるかに高い」(“InformationWeek”Research)

 次に,著名ブロガーの指摘したWindows Vistaに関する問題を分析してみよう。まず,最新OSをうまく扱えない“技術グル(guru,教祖)”が本当に技術的に鋭い人物なのか疑わしいところだが,それ以上に,こういった批判が現実世界の「大問題」に発展するかどうかも疑念が生じる。多分,大問題にはならないだろう。なぜなら筆者もこれまで,レビューを行う目的で実に様々な構成のハードウエアにWindows Vistaをインストールしたが,互換性の問題はわずかしか発生しなかった。出会った問題は,Windows Vistaの消費者向け発売後すぐに解決した。“技術グル”たちの苦情は一体どこから生まれたのだろうか。

 互換性問題のいくつかは,間違いなく本物だった。Windows Vistaはメジャー・アップデート版であり,ドライバ・モデルの設計を完全に変更し,新しいセキュリティ機能付きカーネルや新たなグラフィックス・スタックを採用した。「アンチウイルス・ベンダーは,Windows Vistaが発売される何年も前から情報を知っていた」との主張はあるものの,アンチウイルス・ソフトウエアがWindows Vista発売時に後れをとった分野であることは明白だ(現在は,大手アンチウイルス・ベンダー5社すべてがWindows Vista対応製品を販売している)。全体的にみると,互換性問題と思われていた騒ぎは完全に沈静化した。大多数のデバイス(さらにアプリケーション)は,Windows Vistaで快調に動いている。

 具体的な数字を確認しよう。1月の時点で,Windows Vista対応デバイスは150万台以上あった。現在は190万台ある。Microsoftから聞いた情報によると,これは現行デバイスの約96%に相当するという。大したレベルの互換性ではないだろうか。「Windows Vista生態系の範囲――つまり,アプリケーションとデバイスの対応状況――は,当社が過去にリリースしたどのOSをも上回った。これは,パートナと顧客に準備をしてもらった5年間の努力のたまものだ」(MicrosoftのWindowsクライアント・パートナ・プラットフォーム・グループ担当ディレクタであるDave Wascha氏)

 さらにWindows Vistaには,何らかの問題発生時にフィードバックを送るための仕組みが追加された。このフィードバック機能のおかげで,Microsoftはこれまでにないペースで問題を直している。さらに重要なのは,トラブルの主要因となるデバイス・ドライバの非互換問題を特定し,優先的に対応中であることだ。まだWindows Vistaに対応していない4%――約7万台――のデバイスのうち,4000台がこうした問題の約80%に関係する。Wascha氏は先ごろの説明会で,「これが今すぐ対応すべき問題のリストだ」と述べた。「そこでベンダーと電話で話し,直接会いに飛んで行き,問題の解決に取り組んでいる。解決できたら,最初から繰り返す」(Wascha氏)

 あるデバイスをWindows Vistaに対応させるかどうかは,どのような基準で判断しているのだろう。Wascha氏によると,「ユーザー・レポートが500件以上になる全デバイスについて,ドライバを修正するか作成する」そうだ。「当社は,デバイスをWindows Vistaに対応させるというただ1つの目的のため,大量の技術者を投入している。そして,“問題リスト”の処理を今後も続ける。もちろん既に販売されていないデバイスのドライバは,メーカーが対応を止めてしまったので,唯一の例外だ。残念ながら,例外に相当するデバイスはWindows Vistaで使えない」(Wascha氏)

 Microsoftはいろいろな意味で,身動きできない状態に陥っている。技術革新を求められるのに,それによる副作用は嫌われる。例えば,Windows Vistaは見た目を派手にするためグラフィックス・アーキテクチャを変えたが,一部のユーザーから「既存のビデオ・カードが使えなくなった」という不満が出た。「確かに,グラフィックス・カードで失望したユーザーは存在する。ユーザー全体からみるとごく少数だが,声が大きい」(Wascha氏)。Wascha氏は,問題のグラフィックス・カード・メーカーの名前を出さなかった。著者の経験では,ここにきて差は少なくなっているが,米NVIDIA製グラフィックス・カードはカナダATI Technologiesよりも対応状況が悪かった。

 ブロガーが文句を書いている目立つ問題はどうなった。これらについて,Wascha氏は「Windows Vistaのフィードバック機能で報告を受けたことがない」と述べる。それはそうだろう。こうしたブロガーは,Microsoftのフィードバック・プログラムを使わなくなってしまったのだ。そのため,修正版ドライバがリリースされても,「Microsoftが問題を直した」という続報を目にすることなどない。「何の手だてもなく,頭を悩ませている。修正したドライバはリリース済みなのだから」(Wascha氏)

 ほかにも,インターネットで広まっている評判とは逆の事実もある。MicrosoftがWindows Vistaで見つけたセキュリティ問題の数は,Windows XPの発売から100日間に見つけた数の3分の1なのだ。アプリケーションのクラッシュも,以前より迅速に解決できている。例として,Wascha氏は「アプリケーションのクラッシュを起こすあるバグは,報告から2日以内に修正をリリースできた」と指摘した。「Windows Vistaに対する世間の認識を正したいと思っている。これまで行った仕事が素晴らしい成果を収め,われわれはWindows Vistaが正常に機能していると知っている」(Wascha氏)

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