■ プリミティブな面白さとは

---さきほど「ゼルダの伝説」を試遊しましたが,インタフェースを変えるだけで,昔のソフトウエアをもう一度,楽しめるんですね。

岩田氏:まったくその通りです。これまでのゲームは,「もっとたくさん」「もっときれいに」「もっと豪華に」の連続で進化してきました。こういう「もっと」を一方向で追求し続けているうちに失われたものがある。「簡単にわかる」「誰でもできる」といったシンプルな面白さの追求,これをゲーム業界は怠っていた。

 新しいインタフェースとの組み合わせによって,失ってきたものをもう一度,取り戻せる。DSでわかったことは,豪華なものでなくても市場が受け入れてくれるということだった。これに気づいた開発者は,「あれも,これも詰め込まなければ」との窮屈な発想から開放されるだろう。

---任天堂が提唱する「バーチャル・コンソール」の発想もシンプルさの追及にあるのでしょうか。

岩田氏:「パッケージは5000円です」となると,開発者はどうしても豪華なものを作らなければと思ってしまう。3人が2カ月で作ったとしても,結構面白いゲームができることがあるわけですよ。それをネットワーク経由で500円で販売してみれば,買う人がそこそこいるかもしれない。こういう環境を用意することで,プリミティブな面白さを追求しようという開発者が増えてくれることに期待したい。

 「脳トレ」の意味は,新しいゲーム・ユーザー層を開拓しただけではなく,ヘビー・ユーザーにも「シンプルな面白さ」を思い出させたという価値がある。あるヘビー・ユーザーによれば,「レーシング・ゲーム」でタイムを縮めるのも「計算問題」で時間を短くするのも,本質が同じだと気づいたという。なので,こういうシンプルな面白さを提案できなくなっているゲーム業界の体質を変えることが大事だと再認識した。

 もちろん,リッチなコンテンツはリッチなコンテンツで否定するわけではありません。あれは大事だし,これからもなければいけない。でもみなさん,毎日フランス料理や会席料理じゃ飽きるでしょ。たまにはお茶漬けも食べたい。ゲーム・ビジネスがあまりに一方向しか向いていないので,「ちょっと待った,ほかにも道がある」というメッセージを込めたのが今回のWiiです。

■ 3秒以上は待てない

---HDDは使わず,フラッシュ・メモリを多用していますね。

岩田氏:最近のゲームは,起動時間が長すぎると感じています。その一つの理由に,ディスクからのデータの読み込み時間がある。それは光ディスクもHDDも同様に存在する。私は以前から,「電源を入れてから,3秒でゲームを立ち上げてほしい」と開発陣に話している。私がせっかちな性分というのもあるが,周囲の人に聞いても,皆ゲームの待ち時間はつらいという。コア・ゲーマーでもつらいのだから,ましてやこれまでゲームに関心がなかった層にはなおさらだろう。だからこそ,フラッシュ・メモリーを使ってデータをキャッシュする構成にしている。

 加えて,より速く起動するような工夫も盛り込む予定だ。具体的には,前回プレイしたゲームのデータを一時的にフラッシュ・メモリに記憶しておく。こうすることで,次回もまた同じゲームをプレイする場合,早期に立ち上がるようにした。光ディスクをフロント・ローディングにしているのは,そこにも理由がある。フロント・ローディングであれば,前回挿入したディスクがそのまま入っているか,といった情報がすぐわかるからだ。

---リモコンと本体の接続には無線を使っていますね。

岩田氏:リモコンには,赤外線とBluetoothを搭載しています。コントローラとWii本体間の情報のやり取りは,Bluetoothを使う。赤外線は,リモコンのポインタでテレビ画面を指し示す場合に使う。この赤外線はIrDAではなく,単に赤外線のポインタとして利用しているだけである。テレビ側に赤外線の受光部「センサーバー」があり,ここでポインタの情報を取得する。

 Wii本体には,Bluetoothだけでなく無線LAN機能もある。無線LANには大きく2つの役割がある。一つはニンテンドーDSとの接続で,もう一つはインターネットへの接続。ニンテンドーDSとの接続では,例えばDSの「nintendogs」で飼っている犬を,Wiiのゲーム画面上に登場させるといった連携がある。

 Wiiがインターネットに接続する際には,この無線LANを使うことを想定している。インターネットが家にあっても,ほとんどの場合パソコンのみに接続されていて,テレビ・ゲームを遊ぶ子供部屋などにはEthernetなどの線は来ていない。だからこそ無線LANが標準で搭載できる時代が来ないと,ゲーム機にネットワークは付かないとすら思っていた。Wiiで無線LANを標準搭載させる以上,7~8割のユーザーがインターネットに接続することを目指したい。そうなるように,つないだら価値があるようにしていきたい。

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