米Microsoftは1月25日に,突如Windowsの主要ソース・コードを競合他社に開示すると提案し,欧州連合(EU)の独占禁止法(独禁法)当局である欧州委員会(EC)の委員Neelie Kroes氏を驚かせた。この提案には,EUの定めた制裁措置に対する同社の取り組みへの批判を回避する狙いがある。しかしこのソース・コード開示ライセンス契約は,同社が周囲に信じ込ませようとしている万能薬にはならない。実際のところ,ある著名な評論家は,Windowsソース・コードを開示するという同社の決定がWindowsユーザー全員に悪い影響を及ぼすと考えている。

 この問題は極めて難しいので,どこから始めればよいか分かりにくい。Neelie Kroes氏からにしよう。彼女は,Windowsソース・コードの一部を競合他社に開示するというMicrosoftの提案に対し,以下のコメントを発表した。「Microsoftがソース・コード開示を決定したのは驚きだった。EUは同社に対し,Windowsと通信するのに必要な技術文書の提供を求めていた。通常,ソース・コードは“最高”の文書ではない。だからプログラマは,ソース・コードだけでなく総合的な文書の提供も求められる」(Kroes氏)

 最後の部分が重要だ。EUの制裁措置で規定された文書は,Windowsとの通信方法について開発者の理解を助けるものである。つまり,Windowsのプロトコルおよびインタフェースとどうやり取りするかが記述された文書だ。しかしWindowsのソース・コードは極めて複雑であり,一部分だけを切り出したソース・コードでは,ほとんど理解の助けにならない。MicrosoftはWindowsのソース・コード開示に関する今回の大きな発表によって,壮大な提案が実はEUの要求を満たしていないという事実を覆い隠そうとしているのだろう。米Sun Microsystems上級副社長のJohn Loiacono氏はThe New York Times紙に「これは,Microsoftが情報開示の範囲を最小限に抑えようと,殴り,蹴り,叫んでいるのだ」と語った。

 Microsoftとしては,「Windowsのソース・コードを開示するという提案は,EUの要求を満たすどころか上回っている」と信じさせたいようだ。Microsoftの顧問弁護士であるBrad Smith氏は,「今日,われわれは最も価値のある知的財産をテーブルに出したので,技術的な法令順守の問題を解決できる」と述べた。さらに,開示するコードに対するオープン・ソース陣営による検査や,サード・パーティ製品へのコピーを許さないことを付け加え,「Windowsをオープン・ソース化することはない」(同氏)とした。同社は,既に提供すると約束している技術情報に付加する形でソース・コードを開示することと,追加料金を必要としないことも明らかにした。

 しかし,英Reuters調査部門経済論説員のPaul DeMartino氏は,「Windowsソース・コードの多くの部分を開示するというMicrosoftの決定が,マルウエアの侵入を防いでいた門を開くことになる」と指摘する。「大量にインストールされているMicrosoft製品は,悪意のあるウイルス作者にとって魅力的だ。そうした連中がソース・コード開示によだれを垂らし,近いうちに,Microsoftのサーバー製品に攻撃が集中するようになるだろう」(同氏)

 良しあしは別にして,Microsoftによるソース・コード開示の提案は,興味深い議論のきっかけになった。さらに大きな問題は,EUがMicrosoftの提案を誠実な対応ととるか,単なる時間稼ぎととるかである。歴史を振り返ってみると,後者が真実に近そうだ。

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