ITエンジニアからデータサイエンティスト、そしてCTOまで――。事業戦略の重要ポジションに海外人材を抜てきする日本企業が増えてきた。海外拠点を含めた世界的な戦略を構築するため、そして世界で最先端の技術を手に入れるために、雇う人材の枠を全世界に広げている。楽天やアシックス、エムスリー、マネックス証券などの先進企業は、彼ら彼女らに従来の常識や壁を壊す役割を期待している。

(進藤 智則)

part1 我が社のCTOはオランダ人
part2 海外人材はこう発掘する


【無料】特別編集版(電子版)を差し上げます 本記事は日経コンピュータ2014年3月20日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文は、日経BPストアの【無料】特別編集版(電子版)で、PCやスマートフォンにて、3月27日よりお読みいただけます。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 「人材募集を英文にして海外サイトに載せたとたん、世界中から応募が来た」――。医療従事者向けネットサービスを手掛けるエムスリーは驚きを隠さない。同社がこれまで採用要件に掲げていた「日本語スキル」を撤廃してから、南米やロシア、インドなどから腕に覚えのある技術者たちが殺到してきた。

 ビッグデータやモバイル、クラウドコンピューティングなど次々と新潮流が生まれ変革を続ける中、先進的な日本企業が相次ぎ重要ポストに外国からの人材を迎え入れている。国にとらわれずに最適な人材を集め、国際的な競争力を高めようとしている。

現状を打ち破る推進役として期待

 楽天は事業拡大に欠かせないサイト分析を担うデータサイエンティストを世界中から探し、韓国出身の女性を抜てきした。アシックスは、グローバルで統一した電子商取引(EC)基盤の構築にスイス製ソフトの導入を決め、

 同ソフトのスペシャリストである米国人を迎え入れた。マネックス証券はアジャイル開発の先導役として、最高技術責任者(CTO)にオランダ出身の技術者を据え、陣頭指揮を取らせている。

 専門技術にたけた優秀な人材を探す中、もはや労働力人口が6000万人程度の日本国内にこだわる必要はない。そう気が付いた多くの企業が、30億人規模の全世界から、求める技術やノウハウを持つ人材を見つけ、重要ポストに抜てきし始めた。

 世界規模のビジネスを展開する上でも外国人のIT人材は必須となる。海外拠点との橋渡し役となり、多様な国の市場特性や商習慣を踏まえて、効果的な戦略を立てられるようになる。

 企業にはもう一つ、異なる視点を持つ人材をあえて登用することで、企業の変革を先導させるという狙いがある。日本人同士では踏み切りにくい一大変革を従来にない視点で実践し、現状を打ち破る推進役となることを期待している。こうした思いを知ってか、アシックスのEC基盤のスペシャリストであるジョナサン・ラマスター氏はこう言う。「自分の専門性を生かし、会社の事業を世界レベルで変えたい」。

 以降では、日本で採用された外国人が何を考え、社内のどこから変革を始めているかを見ていこう。

楽天

ジョン氏

Q1. ●
ジョン・ヨンズ さん
韓国
楽天技術研究所 データサイエンティスト

 「自分が何をやりたいかより、相手に話を聞くことを最優先する。それが私の信条だ」。楽天でデータサイエンティストを務める韓国出身のジョン・ヨンズ氏はこう言い切る。

 「話を聞くことを最優先」というジョン氏の発言は、「相手からどんな球が来ても、必ず打ち返せる」という自らの専門性に対する自信の表れでもある。ビッグデータ隆盛の中でデータサイエンティストに注目が集まっているが、ジョン氏は統計学を少々かじった「にわかデータサイエンティスト」ではない。機械学習や異常値検出の研究で博士号を持つ、筋金入りの研究者。論文がアカデミック分野で査読付きの国際論文誌に幾度となく採択され、その実力を世界的に認められたワールドクラスのデータサイエンティストだ。

 研究者だからといって、ジョン氏は“象牙の塔”に閉じこもることはない。その行動力は社内でも図抜けている。

 同社には週3日、研究員が開発現場に席を置き、現場社員とコミュニケーションしながら課題を探る「Co-Working制度」と呼ぶ仕組みがある。ところが、ジョン氏は「制度などお構いなし」(楽天執行役員で楽天技術研究所所長の森正弥氏)に、縦横無尽に動く。課題打破のためには労をいとわず、人脈を駆使して現場へ直接話を聞きに行くのだ。

 ジョン氏が専門とする異常値検出とは、膨大なデータの中から不正アクセスなど異常の兆候を見つける技術。年間流通総額約1.7兆円、商品点数約1億点という巨大ECサイトで、日々攻撃にさらされる楽天市場に欠かせないものだ。他サイトで入手したIDを悪用して楽天のサービスにログインし、正規ユーザーのように振る舞いつつ不正に及ぶ攻撃者を、わずかな特徴からあぶり出す。

 例えば、福岡支社が担当するデータ分析に関わる課題を解決するため現地に出張。打開策としてシンガポールにある社外の研究所の技術が役立つことを見いだし、現地との連携の道を探り始めた。データ分析を極めた専門家の登用が、同社の競争力の源になっている。


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出典:2014年3月20日号
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