昔、当時の最新ITを駆使した情報システムは光り輝いていた。ところが、コスト削減や運用一辺倒になり、情報システムは新たな発想を生みだす力を失った。最先端のITは米グーグルや米フェイスブックなど、クラウドが生み出すばかりだ。しかし、ここにきてビッグデータの活用を目指し、最先端のITが情報システムに流れ込んできた。“新型IT”を手に、技術者のチャレンジが再び始まった。

(玄 忠雄、森山 徹)

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 「コストカットのためだけにITを使うのは間違っていると思う」。気がつけばコスト削減一辺倒。そんな閉塞感とは無縁に、ITを使ってチャレンジを続けるのが、カブドットコム証券の阿部吉伸事務・システム本部長だ。

 最近のチャレンジの一つが「1秒保証」である。証券取引所などへの取次処理時間に1秒という基準を設けた。1秒を超過した場合は顧客の手数料を無料とする。

 「きっかけは“やるぞ”という社長の一声。とにかくやるしかなかった」。厳しい課題をいきなり突きつけられた阿部本部長。しかし、当時の心境を語る顔はどこか楽しげだ。「達成できるかどうか分からなかったが、頑張れば何とかなるレベルだと思った」。そしてこう続ける。「でも、従来のDBを使っていたのでは3秒を切ることさへ難しかった」。

 阿部本部長が頼ったのが、オンメモリー型の超高速データベース(DB)、米ジェムストーン・システムズの「GemFire」だ。メモリー上にデータをキャッシュし、高速なレスポンスを実現する。「正直に言うとピーク時には1秒を超えることもある。それでもITを使ってサービスの価値を高められた」と、納得の表情だ。

ビッグデータで潮目を変えよう

 カブドットコム証券が採用した超高速DBをはじめ、圧倒的なスピードを誇る“新型IT”が注目を集めている。こうしたITを生かすことで、これまで不可能だと思っていたことが可能になったり、これまで考えもしなかったデータ活用のアイデアが生まれたりする()。

図●“新型IT”の活用で発想を変える
ソーシャルログやセンサーなどを加え、情報システムで処理するデータの量や種類が増えてきた。“新型IT”を使い、こうしたビッグデータを高速処理することで、新しいデータ活用のアイデアが生まれてくる
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 “新型IT”が挑むのは「ビッグデータ」だ。ビッグデータは、データの量が大きいだけでなく、その多様性が増したり、発生頻度が上がったりするという側面がある。

 例えば、従来の定型データに、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアから非定型データが加わり、多様性は増す。「ユーザーのレビューといったソーシャルコンテンツと、従来の商品情報などを掛け合わせると情報は膨大になる。そうした情報からレコメンドやサーチの状況を把握し、リアルタイムに近いスピードでサービスを改善したい」(楽天技術研究所の森正弥所長)。

 こうした新しいテーマに取り組むための武器が次々と登場している。それは、処理方式の高速化だったり、ハード/ソフトの高速化だったりする。ビッグデータは眺めていても何も語らない。迎え撃ってこそはじめて、価値を引き出せる。

 「業務ありきで必要なデータを集めるプロセス指向の情報システムは成熟してきた。これからはとりあえず全データを取っておき、そのデータの使い道を考えるデータ指向が注目だ」(NTTデータ 基盤システム事業本部の濱野賢一朗シニアエキスパート)。

CEPとセンサーでリアル監視

 並列分散処理の徹底は大きなトレンドの一つ。オープンソースの分散バッチ処理ソフト「Hadoop」などを使いこなすことで、従来システムをはるかに超える性能をたたき出せるようになってきた。

 NTTぷららは、オラクルのインメモリー分散処理ソフト「Oracle Coherence」を使って新システムを構築。夜間バッチ処理を、従来の15時間から2時間に短縮した。

 高速化が進むのはバッチ処理だけではない。リアルタイム処理での注目株がCEP(複合イベント処理)やストリーミングと呼ばれる処理方式だ。時系列に流れるデータをメモリー上で次々と処理していく。株価を監視して自動注文する、交通事情に応じて高速料金の値段を変える、窓口の混雑度によって人員配置を変える、といった仕組みが簡単に作れる。

 NTTデータは首都高速道路の橋梁の異常監視にCEPを利用した。橋梁に取り付けたセンサーから送られるデータを次々とCEPに読み込み、あらかじめ定めたルールと突き合わせて異常の有無を判断する。発生頻度の高いデータを高速処理することに向くCEPだが、特にセンサーとの相性は抜群だ。


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出典:2011年7月7日号
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