クラウド型サービスの先兵として、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が各社から相次いで登場している。一般的にSaaSはパッケージ製品よりも安価であるとされているが、実はパッケージ製品と同じように設計・設定費などの初期費用がかかるケースもある。主要な業務分野における43社、78サービスの料金を一挙公開するとともに、SaaS導入の「実際のコスト」について探った。

(島田 昇、白井 良)

◆「月500円」が標準に
◆初期のSI費用は1000万円
◆要件確定がシステムの完成
◆頻繁な法改正にも更新不要
◆課金体系の違いに要注意


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ2月17日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 クラウド時代になれば、IT資産を自社で所有する必要性が薄れ、手間もコストも削減できる──。

 インターネット経由でITリソースを利用するクラウドコンピューティングの普及を目の前にして、このような将来像を描く経営者や情報システム部門の担当者は多いだろう。なかでも、手軽に使えるサービスとしてSaaSに注目する企業は多い。しかしSaaSは本当に安く、かつ便利なのだろうか。

 これを検証するには二つの観点からの分析が必要だ。一つはSaaSごとの料金差だ。ユーザー企業は自社の業務に最も合致したSaaSでありながら、できるだけ安価なサービスを選択したい。そこで今回、主要43社が提供する78サービスについてサービス内容の概略と料金を徹底調査した。その結果、同じカテゴリーのSaaSながら、料金差が10倍以上というケースもあることが判明した。もちろん料金なりにサービス内容は異なるが、安易にサービスを選択するとシステムコストを大きく左右することになる。

 もう一つは月額料金を並べただけの料金表からは見えてこない初期費用だ。SaaSであってもパッケージソフトと同様、自社業務に合わせたカスタマイズが必要になる。特に業務と密接にかかわるSFA(営業支援)やERP(統合基幹業務システム)では、情報の閲覧・入力画面やデータテーブルは企業ごとに異なるものにならざるを得ない。既存システムとの連携が必要になるケースもある。こうしたSI(システムインテグレーション)費用が、実際のSaaSの“総利用コスト”を大きく変動させる。

 加えて、従来のパッケージソフトとSaaSでは導入工程や工程ごとの作業に差異がある。当然、その違いはSI費にも影響する。こうしたSaaS導入にかかわる“新常識”を知らないと、SaaSを検討するに当たってのコスト試算すらできないということになる。そこで本誌はSaaS事業者やSaaSの導入支援を手掛けるITサービス企業に「SaaS導入の実際」を取材。本来ならば非公表の“隠れた”初期費用についても、できる限りの情報入手を試みた。

 今回は情報系ではグループウエアと営業支援、基幹系ではERP/会計、人事/教育を取り上げる。業務アプリケーションのなかでも、多くの企業が利用するものだからだ。加えて、昨今の出張旅費削減のニーズから関心が高まるWeb会議についても調査した。SaaS導入で必要になる「実際のコスト」の把握に活用していただきたい。

グループウエア
「月額500円」が標準に

 グーグルが2007年に提供を開始した企業向けSaaS「Google Apps Premier Edition」が、SaaSの料金水準に大きな影響を与えている。Webメールサービス「Gmail」を軸に、予定表や文書管理などの様々な機能を1ユーザー当たり月額500円(年額6000円を月割り)、初期費用なしという破格の料金設定で展開したからだ。SaaS型グループウエアの料金は、この“グーグルプライス”が標準になりつつある。

 元々グループウエアはSaaSのなかでも競争の激しい分野。「グループウエアは全社員が使うため、ベンダーにとって“おいしい”サービスだった。そのうえ、CRMの導入につなげやすいなどユーザー企業をSaaS活用へと導く入り口となる」(SaaSに詳しい大和クオンタム・キャピタルの山下純バイスプレジデント)からだ。基幹系システムと違ってデータを社外に置く心理的な抵抗感が薄く、導入を検討するユーザー企業が早くから多かったことも競争激化に拍車をかけた。

 そうした激戦区にグーグルという“火種”が投げ込まれた。その結果、Google Apps Premier Editionの登場以降に提供を開始したサービスは、軒並み1ユーザー当たり500円前後という値付けになっている。

 09年4月に提供を開始したマイクロソフトの「Microsoft Business Productivity Online Suite(BPOS)」は、メールと予定表機能を提供する「Exchange」だけならば1ユーザー当たり月額522円で利用できる。さらに同社は今年3月にも、現在は5Gバイトのメールボックスの容量を、グーグルと同じ25Gバイトに引き上げる方針だ。

 09年10月にサービスを開始した日本IBMの「LotusLive」は、メールと予定表に機能に絞った「iNotes」だけであれば、1ユーザー当たり429円(1年契約の場合)で済む。なお、表では月額2290円としているが、これはファイル共有などの機能を提供する「Connections」も含めた場合の価格である。

 国内勢も同様の状況にある。NTTコミュニケーションズが09年10月に提供開始した「Bizメール」はメール容量が100Mバイトの場合で月額450円、10Gバイトの場合で700円。同月にユーフィットが開始した「ナレジオン」はメールサービス付きのスタンダード版が1ユーザー当たり月額800円、メールなしのエントリー版が300円の料金設定だ。

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出典:2010年2月17日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。