開発工数11万人月、投資額2500億円に及ぶ史上最大のプロジェクトが、いよいよ5月から切り替えを迎える。三菱東京UFJ銀行の勘定系システム統合「Day2」だ。開発費が3年前の試算の2.8倍に膨らんだことから、遅れや品質の低下を危惧する声があるが、実態はどうなのか。トラブル対策は十分か。三菱東京UFJ銀が完全公開した内部資料を基に、プロジェクトの内情と成否の行方を緊急検証する。

(大和田 尚孝)


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ3月15日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集2」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 「プロジェクトの最新状況を公表する。順調かどうか、皆様にご判断いただきたい」。三菱東京UFJ銀行の原沢隆三郎 常務取締役事務・システム部門長は、こう述べた。2月25日に同行が開催したシステム統合に関する記者説明会での発言である。

 三菱東京UFJ銀は2008年12月の完了を目指して、旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを一本化する「Day2」プロジェクトを進めている真っ最中だ。システムの稼働前にユーザー企業が進捗状況を公開するのは珍しい。開発表明や稼働セレモニー、トラブル後のお詫び以外で、説明会を開くのも前例がない。

 原沢常務は、「システム統合は社会に与える影響が大きいため、説明責任があると判断した」と話す。Day2の行方を疑問視する風評リスクを抑えたいとの狙いもあるとみられる。公表されたテスト結果や切り替え判定基準などの内部資料を基に、まずはDay2の現状を見てみよう。

不良摘出率が伸びず追加で試験

 Day2の最大の目的は、旧東京三菱銀と旧UFJ銀に分かれているシステムを完全統合することにある()。統合方針は、旧東京三菱銀のシステムへの片寄せだ。ATM(現金自動預け払い機)の24時間365日連続稼働など、旧UFJ銀のシステムだけに搭載されている機能は、追加開発する。

図●2008年末の完了を目指す三菱東京UFJ銀行のシステム統合
図●2008年末の完了を目指す三菱東京UFJ銀行のシステム統合
合併時の「Day1」で旧2行の勘定系を相互接続し、いよいよ「Day2」で勘定系を一本化する
[画像のクリックで拡大表示]

 ベンダーの技術者を含めピーク時で6000人の要員を投入して開発を進めた結果、2007年8月までに実装と単体テスト、サブシステム内の結合テストを終了。11月には「ITb1」と呼ぶ接続テストを完了し、この1月には「ITb2」という総合テストを終えた。

 テストケースは、ITb1以降で103万件以上に達する。直近のITb2にフォーカスすると、約31万5000件のテストを設定。「見つけた不良は、すべて解決した」(根本武彦執行役員システム部長)。

 次工程の最終確認テスト「ST」まで持ち越した不良がないところを見ると、ITb2はおおむね順調に完了したようではある。だが、消化の過程では1つの問題が浮上していた。「不良の摘出率が目標に届かなかった」(根本執行役員)のである。

鬼門の口振は本番データでテスト

 三菱東京UFJ銀は、自社のテスト基準と過去のテスト結果、今回のテスト件数を照らし合わせて、不良の摘出目標を算出。最低でも、その80%は発見したいと考えていた。だが、摘出件数は開始当初から計画を下回り、目標まで伸びる気配がなかった。

 考えられる理由は2つある。品質が予想より高いか、テストが不十分かだ。前者なら問題ないが、後者の場合は後工程で手戻りが多発したり、稼働後のトラブルにつながったりする。

 ここで、三菱東京UFJ銀は、次工程に進まずに、テストケースに漏れがないかを改めてチェックする必要があると判断した。200種類のサブシステム単位で、不良の摘出率や重大性などを総点検。問題ありとみなしたサブシステムを中心に、追加テストを設けた。

 それでも最終的な不良の摘出件数は2008件と、目標の76.7%にとどまった。ただ、不良の累計を示す折れ線グラフが水平に近づいたことから、「ITb2としては十分な品質が確保できた」(根本執行役員)と結論付けた。

 2月からは、最終確認テストのSTに入っている。このSTのテストケースは約8万2000件。Day2で手を入れていない機能まで網羅する。例えば、内国為替を扱う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」など社外との接続テストは、100以上に及ぶすべての相手先との間で実施する。

 銀行のシステム統合にとって鬼門と言える口座振替のテストも同様だ。電力会社やクレジットカード会社などと送受信するデータ・フォーマットに変更がない場合でも、本番データを使って時間内に処理が正常終了するか確認を取る。本番データは、月間7億件と過去最多を記録した月のものを使用。二重引き落としや処理遅延などのトラブルを防ぎたい考えだ。


続きは日経コンピュータ3月15日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。


出典:2008年3月15日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。