膨大なデータを指すビッグデータから、ビジネスに生きる知見を引き出す専門家のこと。IT(情報技術)各社や大量のデータを扱う企業が育成を急いでいる。


 ビッグデータのブームはとどまるところを知りません。企業活動で生まれる膨大なデータを蓄積して素早く分析できる技術やハードウエアが充実してきたことで、ビッグデータに対する期待はさらに高まっています。

 そうしたなか、脚光を浴びているのがデータサイエンティストの存在です。彼らはデータの分析手法に詳しく、ツールの操作に長け、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に代表されるビッグデータからビジネスに生きる真の情報を引き出せる目利きです。大量に集まる顧客の声からすぐに対策を打つべきものや商品開発につながるアイデアの種を見つけたり、数字の変化から消費動向の変化を読み取ったりします。

 しかしデータサイエンティストは絶対数が足りず、その育成が課題であるのも事実。たとえ優れた技術やハードがあっても、そこから有益な情報を読み取れる人がいなければ、ビッグデータも宝の持ち腐れです。

 米EMCが米国や英国、中国、インドなどで実施した調査によれば、ビッグデータをビジネスの意思決定や生産性の向上、顧客ニーズの把握に生かしている企業は全体の3分の1にとどまっています。データサイエンティストの育成は大量のデータを扱うユーザー企業とIT企業の双方にとって急務になっているといえます。

効果:ITとビジネスの橋渡し

 データサイエンティストを育てるメリットは2つあります。1つはビッグデータを活用するうえで欠かせないITとビジネスの橋渡しができることです。ITとビジネスに精通したデータサイエンティストがいれば、情報システムの効果をビジネスサイドが実感しやすくなります。例えば、マーケティング部門では効果検証などで活躍が期待できます。

 もう1つは、ITを売り上げの拡大に結び付けられることです。クラウドコンピューティングに代表されるように、ITといえばコスト削減などの合理化に使われることが多かったのですが、データサイエンティストの高い情報リテラシーと着眼点を持ってすれば、システムを駆使して直接的に売り上げを伸ばせる可能性があるのです。

 特にIT各社はデータサイエンティストの育成を急ぎ、分析力の高さを自社の強みにしようとしています。

出典:日経情報ストラテジー 2012年8月号
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