文・渡辺 敏康(NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部 シニアコンサルタント)

 スマートグリッドとは、大規模発電(火力や原子力など)や分散型発電(風力や太陽光、燃料電池など)をはじめとする電力の供給側と、一般家庭やビルなど電力の需要側との間で、これまでの電力の需給情報に加えて、ICT(情報通信技術)を利用して電力に関連する様々な情報のやり取りも可能にする、次世代の電力ネットワークです。マスメディアでは「(Smart=賢い)+(Grid=送電網)=賢い送電網」や「次世代送電網」などとも表現されています。スマートグリッドの特徴を整理した上で、関連した政府の取り組みを中心に紹介しましょう。

従来の電力網との違いは「情報通信網」と「電気の流れ」

 従来の電力網とスマートグリッドを比較する際には、「情報通信網」と「電気の流れ」に着目すると、両者の特徴が浮かび上がってきます(図1)。従来の電力網では、需給情報のような電力にかかわる情報をやり取りできる「情報通信網」は、発電所から電線まででした。これに対してスマートグリッドでは、一般家庭にまで「情報通信網」が整備されます。また、従来の電力網では、「電気の流れ」は基本的に一方向であったのに対して、スマートグリッドでは双方向も容易になると想定されます。

図1●従来の電力網とスマートグリッドの特徴
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 まず従来の日本の電力網の特徴を整理し、続いてそれと比較しながらスマートグリッドの特徴を見ていきましょう。

(1)従来の日本の電力網の特徴

●遠隔監視や電力品質の維持に一役買っている「情報通信網」
 日本の電力網では、発電所から街中の電線までは、送配電網と共に有線や無線の形で電力会社独自の「情報通信網」が整備されており、電力供給量や故障などの情報がやり取りされています。

 最近では、電気の使い過ぎで宅内のブレーカが落ちて停電することはあっても、落雷などで数十分以上にわたり停電したという経験はあまりないでしょう。理由としては、遠隔監視によって不具合が発生した個所を早期に検出したり、配電の開閉操作を自動で行うことによって漏電などの事故を防ぐシステムが普及したりしていることが挙げられます。こうした遠隔監視や自動検出に一役買っているのが「情報通信網」です。また、効率的な電力供給や周波数(50または60ヘルツ)の安定制御といった電力品質の維持にも、「情報通信網」が貢献しています。

 日本の電力網の特徴としては、地域それぞれの電力会社の系統内では、発電から送配電まで放射状の電力網を構築していることも挙げられます。また、南北に伸びる日本列島の地理的な特性から、基本的に隣接する電力会社同士で電力を融通する形になっています。このため日本全体でそうした連携点を俯瞰(ふかん)すると、“くし型”のネットワークになっていることが特徴です。一方、欧米では国や地域間で電力の連携点が多数あり、“メッシュ状”の電力ネットワークを構成しています(経済産業省「電力系統の構成及び運用に関する研究会」より)。

●上流から下流に向けて「電気の流れ」は基本的に一方向
 電力会社からは、発電から高圧送電、変電、そして配電網から一般家庭やビルなどへと電気が供給されています。上流(発電所)から下流(一般家庭やビル)に向けて、基本的には「電気の流れ」は一方向であると考えられます。ただ最近では、一般家庭などの太陽光発電によって、逆に送電網へと電気が流れるようになりつつあります。太陽光発電の普及率は現在1.1%(総務省統計局「平成20年住宅・土地統計調査」)程度にとどまっているものの、政府の補助金や電力の買い取り制度によって普及が後押しされています。

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