特定分野の専門家やブロガーなど“影響力”を持つ人の情報発信を活用し、ネット上のクチコミを活性化して、潜在顧客の関心を喚起するマーケティング手法。

 ネット上の「クチコミ」効果に注目が集まるなか、有力なブロガーに商品を提供し、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で商品の使用感などを発信してもらう戦略が一般化しています。こうした手法をさらに進めたのが「インフルエンサー・マーケティング」です。インフルエンサーとは「影響力を持つ人」例えば、ある分野の専門家が研究会やセミナーなどで発信した情報を、有力ブロガーが記事にすることで、2階層のインフルエンサーが情報を浸透させ、潜在顧客の興味を喚起することを狙います。

効果◆「関心テーマ」刺激

 インフルエンサー・マーケティングの特色は、直接商品の広告宣伝をするのではなく、商品コンセプトを包含する抽象的な「関心テーマ」を設定する点です。例えば「赤ちゃんの眠りを妨げない紙おむつの新商品」にインフルエンサー・マーケティングを活用したケースでは、「赤ちゃんの眠りの重要性」を関心テーマに設定しました。小児科医の協力を得て子供の睡眠に関する調査を実施し、結果をマスメディアのほか、子育て関連サイトや育児、健康関連の有力ブロガーに発信させることで、消費者の関心を高めました。

 『その1人が30万人を動かす 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング』(東洋経済新報社)の著者でブルーカレント・ジャパン(東京・中央)の代表取締役を務める本田哲也氏は、「単体商品の情報だけでは、ブログで取り上げてもらってもすぐにネタが尽きてしまう。抽象的なテーマを設定しておけば、インフルエンサーがそれに関連する様々な情報を持続的に発信できる」と関心テーマを設定する意義を説明します。直接的な広告宣伝に比べるとやや回り道ですが、長期的に潜在顧客の関心を刺激する効果が期待できます。また商品単体の宣伝では協力を仰ぎにくい専門家も、関心テーマを前面に出した啓発活動には積極的に参加してくれるメリットもあります。

事例◆複数社で共有

 血行促進効果を持つ商品の開発を手がける花王では、血行促進の重要性を広く消費者に啓発するため、2007年から「血めぐり」という関心テーマを設定したインフルエンサー・マーケティングを展開しています。冷え治療を専門とする著名な医師などの協力を仰いで「血めぐり研究会」を組織したり、マッサージやウォーキングのイベントを開催したりすることで、ブログやSNSで「血めぐり」が取り上げられるように促しています。この取り組みには、同様に血めぐりに関連する商品を製造、販売する永谷園や養命酒製造などの企業も参加し、業態横断で1つの関心テーマを活用する新しいマーケティング事例として注目されています。

出典:日経情報ストラテジー 2008年7月号 p.23
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