鉄鋼や電力,セメントなどの産業分野(セクター)別に,温室効果ガスの排出削減可能量を算出し,それらを積み上げることによって,国別の削減目標を設定する方法()。セクター別にエネルギー効率の数値目標を国際的に合意し,科学的な根拠に基づいて目標を設定するため,公平性を担保できるとして2013年以降の世界の温暖化防止対策の枠組み(ポスト京都議定書)の議論でも中心的なテーマのひとつになっている。

図●セクター別アプローチの考え方
鉄鋼や電力,セメントなどの産業分野(セクター)別に,温室効果ガスの排出削減可能量を算出し,それらを積み上げることによって,国別の削減目標を設定する。科学的な根拠に基づいて目標を設定するため公平性を担保できるとされる。出典:地球環境産業技術研究機構(RITE)。
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 京都議定書において日本は1990年比で6%の温室効果ガス削減を義務づけられたが,90年以前の省エネ努力が反映されないとして産業界を中心に不満の声が多かった。このため,日本はポスト京都議定書の枠組み作りにおいては,一貫してセクター別アプローチの採用を主張してきた。

 地球環境産業技術研究機構(RITE)は,2020年時点の削減可能量を国別で試算した結果を公表している。それによれば,最も削減余地が大きいのは中国で約24億トン,次が米国で19億トン。これに対して,すでに省エネが進んでいる日本は,運輸や住宅部門の削減を強化しても約2億トン。世界全体では約110億トンになった。排出大国は非効率な設備が多いため,削減余力も大きい。こうした国に先進国の省エネ技術を移転し,効果的に対策を実施すれば,世界全体で対策コストを抑えられるというのがセクター別アプローチの考え方である。

 ただし,国際的な交渉の場では課題も多い。各国の研究機関によって温室効果ガスの削減可能量の算出方法が異なるほか,国ごとの産業事情に配慮すべきといった指摘がある。事実,米国や途上国の多くは,セクター別アプローチに否定的な立場を取っている。

 その一方で,京都議定書の国別削減目標には科学的根拠が不十分だったという反省が,世界の共通認識としてある。このため,セクター別アプローチが公平な国別総量目標の設定に一定の効果があるという認識が醸成されつつある。

 2008年11月27~28日,セクター別アプローチをベースとする温暖化対策手法を開発するための「ワルシャワ対話」が立ち上がった。これは,12月1日からポーランドのポズナニで開かれる気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)に先立ち,各国の産業担当大臣会合で合意したもの。多額な対策費用が見込まれる温暖化対策を,できるだけ合理的に実施しようという各国の思惑が対話を後押しする。

 「ワルシャワ対話」には主要排出国20カ国と鉄鋼,セメント,アルミ,エネルギー部門の主要団体・企業が参加し,温室効果ガスの排出抑制に関して国を超えて協力関係を強化する。同時に,セクター別アプローチが世界レベルでの温室効果ガス削減に有用とする共通見解の下,産業界と政府代表が同手法の採用に向けて国連(UNFCCC)との交渉を支援する。