大企業が中小企業に省エネ技術を移転して共同で対策を実行し,得られたCO2削減量を排出枠(クレジット)として登録,大企業の削減分として認める制度()。正式には「国内クレジット制度」という。京都議定書が規定するCDMは,先進国が途上国で温室効果ガスの排出削減対策を実施し,削減分を排出枠(CER)として獲得するものだが,同様の仕組みを国内の温暖化対策に適用した。

図●国内CDMの仕組み
大企業は中小企業に省エネ技術や資金などを提供し,共同でCO2排出削減プロジェクトを実施する。中小企業は,CO2削減効果を定量的に把握し,計算書を作成して第三者認証を受ける。認証されたCO2削減量に応じたクレジットが交付されると,中小企業は大企業へ売却する。大企業は,獲得したクレジットを排出枠として,自主行動計画の目標達成に利用できる。
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 中小製造業の2005年度の温室効果ガス排出量は約9000万トンで,基準年比2.9%増となっており,大企業の排出量が減少傾向(基準年比2.3%減)であるのと対照的。中小企業の取り組みが進まない理由は,省エネ設備の導入のための資金調達が難しい,情報が乏しいなどが挙げられる。そこで政府は,中小企業の省エネ取り組みを,大企業が技術的・資金的に支援するための仕組みとして国内CDMを制度化した。

 2008年10月に政府は,国内排出量取引制度の試行を正式に決定,併せて国内CDMの制度もスタートした。国内CDMによって発生したクレジットは,国内排出量取引制度において取引できる。これを受けて経済産業省は,CDM案件となる省エネ対策プロジェクトの募集を開始。ボイラーや空調設備の更新,ヒートポンプやコージェネレーションの導入といったモデル事例を100件用意し,対策の推進に乗り出した。

 高い省エネ技術を持つ企業の中には,国内CDMの制度化に先立って取り組みを始めているところもある。工業計器メーカーの山武は,連結子会社でプリント基板メーカーの太信に省エネ技術を移転し,CO2排出削減量23トン分のクレジットを購入した。実施した対策は,過剰圧のコンプレッサの停止やリフロー炉の簡易断熱,パソコンの電源管理など。CDM審査機関のJACOCDMに削減分の認証を依頼し,日本環境取引機構が削減分を排出枠として登録。その後,山武と太信の間で取引を行った。

 こうした動きを後押しするため,産業界では2008年6月に「国内クレジット推進協議会」を発足させた。日本商工会議所や日本政策投資銀行のほか,新日本製鐵,トヨタ自動車,パナソニックなど,現在約170の企業・団体が参加している。

 経済産業省は,2008年11月7日までに5件の国内CDMプロジェクトの申請を受け付けたと発表した。このうちの1件は東京大学がコンビニ大手のローソンから資金提供を受けて実施するもの。本郷や白金など4キャンパスにおいて,3万8000台の蛍光灯機器をインバータ化するというものでCO2排出量を約4000トン削減できると見込んでいる。