電通は2012年10月中旬から、ゼンリンデータコム、シンクエージェントと共同で、統計的に処理した位置情報データベースを活用したマーケティング支援サービス「Draffic(ドラフィック)」の提供を始める。現実の人の導線を集計したデータを提供し、観光地や商業施設の集客策や周遊促進などの施策を検討するための基礎資料として使えるようにする。価格は個別見積もりだが、基礎的な分析の場合は数十万円から請け負う。

画面1●熱海への旅行者の導線を分析したところ 混雑統計データ:(C)2012 ZENRIN DataCom 地図データ:(C)2012 ZENRIN Z12LE第367号
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 「既存のマス広告だけでは集客が難しい時代になっている。人の導線に関する“ビッグデータ”をうまく活用して新たな集客経路を作り、それを検証する手段が必要だ」と電通コミュニケーション・デザイン・センター次世代コミュニケーション開発部の中嶋文彦事業開発ディレクターは説明する。

 電通は既に営業活動を始めており、自治体や全国展開するチェーン店舗、ショッピングモール運営企業などから100件以上引き合いが来ているという。

 Drafficは、これまで3社が個別の依頼に応じて提供していたツールや分析支援サービスをパッケージ化して提供する。過去、ゼンリンデータコムがじゃらんリサーチセンターとの取り組みで静岡県熱海市から受託したケースでは、熱海への「旅行者」を分析対象にした。通常、旅行者に対する調査を行う場合は、現地でアンケート用紙を配布して回収するなどの手間がかかるうえ、対象者が偏る可能性が高い。

7~8割は熱海に「直行・直帰」

 このケースでは、携帯電話のGPS機能から得られる「人がいつ(時刻)どこ(緯度・経度)にいた」という生データのみを分析対象とする。熱海のケースでは、「2010年11月に熱海市内の緯度・経度範囲内に3時間以上滞在した人」を旅行者とした。3時間以上の滞在者でも旅行者とは見なされない人(主に熱海市内に在住・在勤する人)は、独自のロジックで除外している。

 この条件で抽出した旅行者は1947人で、滞在時間帯から1028人が宿泊旅行者、919人が日帰り旅行者だと分かった。さらに移動元の位置情報を調べると、宿泊・日帰りともに東京都・神奈川県からの旅行者が極端に多く、それ以外の関東各県や東海地方からの旅行者は少ない実態が浮かび上がった(画面1)。

 旅行中の位置情報も分析したところ、「JR熱海駅」と「ビーチライン(道路)」を経由して出入りする人が全体の7~8割を占めた。熱海と箱根を結ぶ「熱海峠」を通過した人は3%しかおらず、「直行・直帰型」の旅行者が多いことが浮き彫りになった。熱海市などは、箱根や湯河原など周辺の温泉観光地と周遊してもらうことを狙った観光振興策を進めていたが、データを見る限り、実態に合っていないことが明らかになった。

 こうした分析結果を見ながら、東京・神奈川以外の場所での広告手法を見直したり、現地での周遊促進策を練ったりすることができる。

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