総合物流で最大手の日本通運は、国内の物流業務を支える基幹系サーバー群を仮想サーバーに移行させる、企業内クラウド(プライベートクラウド)の構築を進めている。物理サーバー約500台からなる現行の基幹系業務システムを順次仮想マシンに移し、最終的には約100台規模にサーバー台数を集約する計画である。

 この基幹プラットフォームの移行に当たって、日本通運は新しいネットワーク制御技術を導入した。「OpenFlow」である。例えば送信元とあて先が同一の一連の通信を「フロー」として定義し、そのフロー単位に経路を制御する仕組みだ。OpenFlowに対応したスイッチ製品を業務システムの実環境に導入し、運用しているのは、世界でも初めての事例である。

ポイントはここ!

●OpenFlow対応機器を導入してプライベートクラウド運用の柔軟性を向上

●将来の転送能力拡張を見越して立方体状に対応機器を構成

 新技術導入の狙いは、サーバー仮想化の効果を最大限に引き出せるシステム環境を実現することである。仮想サーバーの追加、増設に際して、ネットワーク構成の変更も迅速に対応できるようにした。「従来はサーバーの構成変更に伴うLAN環境の再設計に、外部のエンジニアの力が欠かせなかったが、それが社内スタッフ数人で対応できるようになった」(日通情報システムの山本英博ネットワーク企画部係長)

とにかく信頼性重視のICT環境

 日本通運の基幹アプリケーション群は、同社の物流サービスを利用する顧客にとっても事業の継続性にかかわるインフラといえる。そのため同社のITシステムは信頼性を最も重視して設計されている。

 ネットワークの至る所を冗長化していることも、その現れだ(図1)。各拠点とデータセンター間は2系統のIP-VPNを使って接続。メインセンターには200Mビット/秒のイーサアクセス回線を2系統引き込み、高速性と冗長性を確保している。

図1●データセンター内ネットワークに仮想化技術を導入してサーバー展開の速度向上
仮想サーバーを稼働させている物理サーバーがどのLANスイッチに収容されているかによらずVLAN設計、経路制御を可能にするプログラマブルフロースイッチ(OpenFlow対応スイッチ)を導入した。
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 仮想サーバー環境の構築に合わせて、2010年秋には、バックアップ用のデータセンターを新設した。約1700拠点に上る国内の各事業所の大半には、2系統のブロードバンド回線が引き込んであり、メインセンターとの通信に障害が生じると、経路を自動的に切り替えてバックアップセンターのシステムを使うようになっている。

 日本通運は現在構築中のプライベートクラウドで、冗長性の確保だけでなく、情報システムの柔軟性を向上させることを重視している。「アウトソーシング業務が拡大し、配送だけでなく、輸送先での物品の設置や倉庫内での管理まで請け負うなど、ニーズがどんどん多様化している。そうしたユーザーの利用形態に、素早くかつ柔軟に対応しなければならない」(山本係長)。こうした背景から同社は、アプリケーションを統一プラットフォーム上で自在に開発できる体制を整えることをゴールに設定している。それを支える基盤として仮想化技術を採用し、必要に応じてリソースプールから処理能力を追加するといった柔軟な運用を可能にした。

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