写真●成城石井が導入した「流通BMS」に対応した店舗用発注端末
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 食品スーパーの成城石井(横浜市)が次世代EDI(電子データ交換)の標準仕様である「流通BMS(ビジネスメッセージ標準)」の活用を軌道に乗せている。流通BMS導入の狙いは、今後の事業拡大に備え、成城石井と取引先である卸やメーカーとの間で発生する受発注業務を効率化することである。2009年3~4月に物流センターを新設したのに合わせ、流通BMSの利用を本格化した。既に、店舗の発注工数削減や伝票レス化、経理部門の労働時間の短縮など様々な面で効果が出ている。

 流通BMS導入プロジェクトは、大久保恒夫代表取締役社長のトップダウンで始まった。2007年2月に就任した大久保社長は、ユニクロや良品計画、ドラッグイレブン(福岡県大野城市)など多くの小売業で経営指導をした経験を持つ。現在は流通業向けシステムコンサルティング会社であるリテイルサイエンス(東京・渋谷)の代表を兼務しており、この業界のシステムに精通している。

 成城石井は、取引のある卸やメーカーのうちおよそ半数に当たる約260社との間で流通BMSによる受発注を実行中だ。自社はもちろん、すべての取引先にも流通BMSに対応した受発注端末を準備してもらった。これらのうち大手を中心とした約30社は流通BMS対応機能を自社で開発した。残りの約230社は、日本ラッド情報サービス(東京・新宿)の流通BMS対応パッケージソフトを導入した。ただし、成城石井の取引先には中小規模の企業が多く、「利用方法のサポートに想定外の手間がかかった」(成城石井管理本部情報システム部の岸圭司部長)。

 流通BMSの活用開始後、成城石井では店舗で商品発注のFAXを取引先ごとに送る手間が省けた。また、店舗と物流センターでほぼ伝票レスの処理も実現。経理部門では、流通BMSでやり取りできる受領・出荷・請求データを使うことによって、取引先ごとの支払伝票などを自動的に起票できるようになった。その結果、「経理部門の残業時間も目に見えて減った」(岸部長)。成城石井が持つ商品別在庫数データの精度が従来よりも上がったため、今後は在庫削減のための基礎データとしても活用していく。

 一方、流通BMSの仕様に内在する細かな課題も明らかになってきた。例えば、流通BMSには欠品の理由に関する区分が「欠品なし」「小売側の責任による発注ミス」「取引先側の責任による品切れ」など5つしかない。ところが、成城石井の関西にある店舗から関西の物流センターに発注したら欠品していたが、関東の物流センターには在庫が有り、在庫の“横持ち”が可能である、という事態が起こった。流通BMSで規定する5区分には該当項目がなく、独自の処理を追加することになった。

 流通BMSは、経済産業省とその外郭団体である流通システム開発センターが推進する流通業界におけるデータ交換の標準仕様である。「受発注の帳票が標準化されていない」「データの伝送速度が遅い」といった流通業の受発注業務プロセスにかかわる様々な問題の解決を目指す。導入例はまだ限られるが、総合スーパー大手のベイシア(前橋市、関連記事)などローコストオペレーションで知られる一部の企業が導入を表明している。流通業界ではデータ交換の効率の悪さが長年にわたる課題なので、今後流通BMSの普及が進む可能性は高い。

 成城石井は、首都圏を中心に、価格よりも品質や安全を強く訴求する食品スーパーを59店舗展開している。業績は拡大基調にあり、2008年12月期の連結ベースの営業収益(売上高)は406億円、経常利益は過去最高の22億円だった。2009年12月期も増収増益を見込んでおり、業容拡大に向けたシステム基盤の整備を急いでいる。