動物病院とペットショップの悩みも解消

 人の健保と同じ仕組みを構築するのは、一筋縄ではいかないことである。従来のペット保険のように契約者と運営会社の2者間で成立するビジネスモデルなら自社の力だけで関係を構築すればいいが、健保となるとそうもいかない。動物病院を巻き込めなければ話にならないのだ。

 アニコムのペット保険が動物病院に受け入れられた理由は「高額な診療費を飼い主に請求しなければならない動物病院の心理的な負担を減らせたことだった」(アニコムホールディングスの江口耕三・取締役執行役員経営企画部長)。実は獣医が一番緊張するのは、飼い主に診療費を告げる瞬間なのだという。あまりの金額の高さに驚き、診療を断念する飼い主がいるほどである。それでは満足がいく診療はできない。そのジレンマをペット保険で半減できると、動物病院は考えた。

●動物病院とペットショップの悩みを解消して、世界初の病院窓口精算を実現
[画像のクリックで拡大表示]

 一方で、アニコムはペット保険の販売代理店として1000軒近いペットショップとも連携した。ここでもアニコムはペットショップの悩みを解消した。ペットショップにとって最大のリスクは「返品」だ。特に生後間もない子犬や子猫を販売した場合、そのリスクは高まる。子犬や子猫が飼い主の家庭に慣れるには1カ月ほどかかるので、環境の変化に適応できるまでは体調を崩しやすい。それを見た飼い主の中には「不良品をつかまされた」と主張して、ペットショップに動物を返品してくる人がいるのだ。症状は動物病院で診療を受ければ乗り切れるものがほとんどで、1カ月もたてば回復する。アニコムは飼い主がペットを連れて帰る当日から補償を開始するペット保険を開発し、最初の1カ月は100%補償を付けた。これが飼い主にもペットショップにも好評だった。

 動物病院やペットショップと手を組んだアニコムは、両者に支援システムを提供する。「ペット保険は火災や地震などの損保よりも保険金の請求頻度が高いので事務処理の効率化が事業運営の鍵を握る」。小森社長は弟が経営する動物病院に通い、カルテ管理システムを開発。簡単に診療費を請求できるようにした。決まったフォーマットのデータを受け取れれば、アニコム側の事務処理も軽減できる。代理店にはペーパーレスの保険募集システムを使ってもらい、契約者にはクレジットカードかキャッシュカードで支払ってもらうことで現金レスも実現。保険料管理業務を省力化した。

出典:日経情報ストラテジー 2009年3月号 pp.108-110
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。