ファミリーマートは2007年度の中間決算で、既存店売上高が3年ぶりに前年同期を0.1%上回った。かろうじてのプラスとはいえ、ライバル陣営の既存店売上高はローソンが前年同期比1%減、セブン-イレブン・ジャパンがおよそ1.5%減と苦戦したことを考えれば大健闘と言っても良いだろう。

 ファミリーマートの業績が回復してきた要因は、ファーストフードの「できたてファミマキッチン」など商品面の成功ばかりでなく、ブランド強化の取り組みが大きい。2005年から着手したブランド確立運動、通称「らしさ活動」が浸透し、来店者を増やすといった成果を生み始めた。事実、1日の店舗当たり平均来店客数は、前年同期に比べて21人増加と過去最高の伸びだった。「来店客数の増加はファミリーマートのファン層が拡大していることの象徴」と総合企画部マーケティング室マーケティンググループの岩崎浩マネジャーは喜びを隠さない。

ホスピタリティを主体的に考える啓もうを推進

 ファミリーマートの「らしさ」活動は「ホスピタリティ(おもてなし)」という同社の基本理念を、全社の各部門で実践することから取り組んだ。まず全社の各部門から合計約60人の「らしさ」リーダーを選出。各部門のリーダーが営業や商品開発、間接部門などのあらゆる部門で、ホスピタリティを実現する具体的な施策を立案、実施した。

図1●ファミマ・フェスタで発表したホスピタリティ事例。
図1●ファミマ・フェスタで発表したホスピタリティ事例。
取り組み内容とその成果をPDCA(計画―実行―検証―見直し)にまとめ、具体的に分かるようにした(成果グラフの縦軸の数字は消してください)
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 続いて2006年秋には、ブランドステートメントである「ファミマシップ」を策定し、2007年3月にはブランドブックをパート、アルバイトを含む全社員に配布している。

 さらに営業部門では、店舗を指導するSV(スーパーバイザー)が各店舗で行っていたホスピタリティ向上のための取り組みを発掘した。全国21に区分されたディストリクトで「らしさ」リーダーが中心になって発掘し、店舗向けに発行する社内広報誌「かわら版」などで他店舗に広めてきた。

 こうして発掘した事例から各ディストリクトで最優秀のものを選んで、2007年9月に開催された加盟店向けの施策説明会「ファミマ・フェスタ」会場でパネル展示した。多くの店長やストアスタッフが集まる場でこうした事例を紹介することで、「うちでもやってみたい」「うちならこうやる」といった意欲を喚起するのが狙いだ。

 店舗の立地や顧客特性に応じたバラエティ豊かな事例が並んだ。「『自慢のペットの写真』を張り出すコーナーを設け、ペットを連れたお客様同士のコミュニケーションを促進する」「韓国籍のお客様が多い店舗で、POPや商品説明などのアナウンスを韓国語に翻訳して放送する」などだ。

図1-b●外国人の顧客のために韓国語のPOP(店頭販促)を作成した店舗の例   図1-b●外国人の顧客のために韓国語のPOP(店頭販促)を作成した店舗の例
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 ファミマ・フェスタで紹介する事例は、従来は売り上げに直結するものを選んでいた。例えばフライドチキンを多く売る店舗のノウハウといったものだ。必ずしも売り上げに直結しない、ホスピタリティ実践事例を取り上げたところに、ブランド強化を目指すファミリーマートの本気が伺える。

 「ホスピタリティの実現手法は千差万別。店舗の実情に応じて、『何をやるべきか』を現場で主体的に考えるきっかけを作りたかった。顧客サービスのベストプラクティスを本社でマニュアル化し、全店舗一斉に実行を指示したとしても、『やらされ感』が強く定着しないだろう」と岩崎マネジャーは話す。

 さらにフェスタの会場では、来場した加盟店関係者からも事例情報を収集した。「ホスピタリティ体験レポート」というアンケートを行って、自分の店で実践する顧客サービスや、他店や日常生活で体験した嬉しい思いなどを書き込んでもらったのだ。

 「雨の日にある店で買い物した時『足元に気をつけて』といわれたのが嬉しく、自分の店でも実践している」といった小さな「感動」の声が寄せられた。こうして集まった何百通もの回答は、その場で張り出され、フェスタ来場者の多くが閲覧した。

張り出された「ホスピタリティ体験レポート」を多くの来場者が真剣に読んだ。   「ホスピタリティ体験レポート」   「ホスピタリティ体験レポート」
写真(右・中・左)●張り出された「ホスピタリティ体験レポート」を多くの来場者が真剣に読んだ。
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