中国でも有数のソフト開発拠点である「大連ソフトウェアパーク」などへの企業誘致を手掛ける大連市の関係機関「大連高新技術産業園区投資促進局」で局長を務めるのが原馳氏だ。大連ソフトウェアパークには、既に900社のITベンダーが拠点を持ち、エンジニアの数は8万人を超える。原氏に、オフショア開発拠点としての大連の現状や今後の見通しについて聞いた。

(聞き手は山端 宏実=日経コンピュータ


オフショア開発拠点としての大連の現状は。

大連高新技術産業園区投資促進局長の原馳氏
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 大連は今後も、一大オフショア開発拠点として存在感を発揮し続ける。2010年に入ってからも、損害保険ジャパンや野村総合研究所(NRI)が大連に拠点を開設した。最近の傾向として、プログラミングやテストといったシステム開発の下流工程だけでなく、経理や人事管理業務の一部を大連に移管する企業が増えている。

ITベンダーやユーザー企業が大連に拠点を設立する利点は何か。

 利点は二つある。一つは人件費や賃料の安さだ。人件費については、日本に比べると7割ほど安い。上海や北京と比較しても3割ほど安い水準だ。ここ数年は年率数%のペースで人件費は上昇しているが、まだ人件費の安さは利点として訴求できる。

 新卒エンジニアの初任給は1800元ほどだ。3~5年ほどソフト開発の経験を積めば、平均月収は4000元程度になる。プロジェクトマネジャーなど管理職に就けば、平均月収は8000~1万元に上がる。大連では5年経験を積めば、顧客の要求に応えられる一人前のエンジニアとみなされる。キャリアアップのスピードは日本よりも速いといえる。背景には、キャリアパスとスピードを特に心配する中国人の特性がある。中国人はキャリアパスが見えないと判断すれば、すぐに転職という道を選ぶ。

 賃料については、1平方メートル当たり月1.5~1.8元が相場だ。上海中心部のオフィス賃料は月額8元ほどであり、上海に比べ大連は4分の1以下の水準だ。

 もう一つは、人材の質の高さと豊富さにある。大連には22の大学があり、およそ30万人が学ぶ。理工系でいえば、中国でもトップクラスの大連理工大学がある。大連理工大学だけでも、学生数は約3万5000人になる。オフショア開発拠点を構えるITベンダーが独自に設立した大学もある。代表例は、中国の大手システム開発会社である東軟集団(Neusoft)が設立した東軟情報技術学院だ。

今後についてはどうか。

 2013年をメドに、大連ソフトウェアパークを含む「旅順南路ソフトウェア産業ベルト」の市場規模を1000億元(1兆2000億円)にする。2009年と比較し、2倍超の水準だ。エンジニアについては、2013年をメドに20万人にする計画だ。

 目標達成に向け、段階的な目標や具体策も既に考案済みだ。直近の目標は、エンジニアの数が1万人を超えるITベンダーを10社にするというものだ。米IBMや米アクセンチュア、東軟、中国の大手ソフト開発会社である海輝軟件(国際)集団(ハイソフト)の達成は確実だ。エンジニアの数を増やす一番の近道は、豊富な資金力を持つ大手ITベンダーに対する支援を厚くし、規模を拡大してもらうことだ。

 新たな支援策も計画中である。具体的には、大連における売り上げ規模や納税額、海外への輸出額、将来計画などを評価し、5~6社のITベンダーに一層の税制優遇や人材育成のための資金を提供するというものだ。1社当たりの支援総額は1000万~2000万元ほどになる。現状、支援の対象は欧米や中国のITベンダーだ。日本のITベンダーは規模拡大のスピードが遅く、選考から漏れている。